ファイナンシャル・プランナー高橋成壽(たかはし・なるひさ)さん

制度の解説

iDeCo加入中に死亡→いくら戻る? 手続き・相続税まで整理

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考えたくないですが……個人型確定拠出年金ことiDeCo(イデコ)に加入中の家族が死亡した場合、どうなってしまうのでしょうか? 万一のケースに対応すべく、ファイナンシャル・プランナー高橋成壽さんに解説いただきました。

ファイナンシャルプランナー高橋成壽さん

ファイナンシャル・プランナー高橋成壽(たかはし・なるひさ)さん

Q1:iDeCo加入者が死亡した場合、積立金はどうなる?

iDeCoの加入者や運用指図者が亡くなった場合、遺族に「死亡一時金」が支払われます。

注意点として、遺族が請求する必要があること、年金ではなく一時金として受け取ることが挙げられます。

また、後述しますが、遺族の中でも受取人の優先順位が存在します。もし、同じ優先順位に遺族がいる場合、代表者が手続きを行います。

死亡したら、いくら返却されますか?

基本的に、iDeCo口座にある年金資産すべてを引き出すことができます。

ただし、遺族が死亡一時金を請求したタイミングで、はじめて年金資産の現金化(売却処理)が開始されることに注意が必要です。
すべて現金化された時点で、死亡一時金の額が確定されます。

つまり、死亡日ではなく、運営管理機関(証券会社や銀行)が売却処理を行ったタイミングで死亡一時金の支給額が決まります。

遺族が請求せずにほったらかしにすると運用が継続されてしまいます。
運用が続くということは、投資信託など価格変動が大きい商品であれば、資産が死亡日よりも減少したり、逆に増える可能性もあります。

「年金受給中」や「運用指図者」の状況で死亡したら、どうなる?

原則としてiDeCoの積み立て金の受け取りは60歳以降です。しかし、「死亡一時金」のほか「障害給付金」についても、60歳未満の受け取りが可能となります。

もし、60歳以降の加入者が運用指図者(うんようさしずしゃ:掛金を払わずiDeCo口座で運用のみする人)や年金受給中の状況で亡くなった場合、iDeCoの年金資産は「一時金」として一括で、遺族に給付されます。

一方、次のようなケースでは、死亡一時金が支給されません。


  1. 遺族が請求しない
  2. 受取人(予定者)が、故意の犯罪行為で加入者を死亡させた場合
  3. 故意の犯罪行為によって、加入者または他の受取人を死亡させた場合

万が一を想定し、iDeCoに資産があることを家族に伝えておきましょう。

手数料は発生しますか?

死亡一時金には、給付事務手数料(432円/1回)が発生します。これは銀行に支払う手数料です。

また、拠出限度額を超えた掛金や加入資格のない月に拠出された掛金を加入者に返金する際には、還付事務手数料(1,461円/1回)がかかります。これには国民年金基金連合会に支払う手数料(1,029円)と、銀行に支払う手数料(432円)があります。

Q2:請求や手続きの流れを教えてください

iDeCoに加入している家族が亡くなったら、どんな手続きから進めればよいでしょうか。

基本となる手続きは、運営管理機関(証券会社や銀行)に加入者が死亡した旨を連絡すること、運用中の資産を受け取るための手続き(裁定請求)を行うことです。

資料の例(加入者等死亡届・死亡一時金裁定請求書)

遺族は運営管理機関に対して、


  • 請求者の氏名、性別、住所、生年月日、死亡者との続柄
  • 死亡者の氏名、性別、住所、生年月日、基礎年金番号
  • 死亡年月日
  • 払い渡し希望金融機関の情報

などを伝えます。

また、以下のような書類を提出する場合があります。


  • 死亡診断書などの死亡を証明する書類
  • 戸籍謄本または戸籍抄本、住民票など
  • 死亡者の収入によって生計を立てていたことを証明する資料
  • 配偶者以外が受取人になる場合は、支給を受けるべき遺族が他に存在しないことを明らかにする書類

Q3:優先順位を教えてください

まず、死亡一時金の受取人の決定には以下表のような優先順位があります。
よくみると、通常の相続のケースとは異なる点に驚かれる人も多いのではないでしょうか。

優先順位の考え方(表)

優先順位 対象者
1位 配偶者
2位 子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹であり、死亡当時、主としてその収入によって生計を維持していたもの
3位 2位のほか、死亡当時、主としてその収入によって生計を維持していた親族
4位 子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹であり、2位に該当しないもの

表:国民年金基金連合会「個人型年金規約(2018年5月)」遺族の範囲及び順位-第130条を基に編集部スタッフ作成

生活を保障することを目的とし、生計が一緒であった人が優先されています。
iDeCoの死亡一時金の受取人は、法定相続人が受け取るとは限らないのです。

1位:配偶者であり、内縁関係者でも支給される可能性があります。

2位:生計を一(せいけいをいつ)にしていた子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。子どもであっても別生計であれば2位から外れます。

3位:生計を一にしていた2位以外の親族で、甥姪などが考えられます。

4位:別生計である子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹が対象です。

同順位に遺族が複数いる場合、誰を優先?

たとえば、遺族に同一生計の子が2人以上いるケースは、死亡一時金を等分にします。
また、子・父母・孫・祖父母および兄弟姉妹などが同順位にいる場合、表の並び順(子・父母・孫・祖父母および兄弟姉妹)に優先順位を決定します。

なお、生前に受取人を指定することもできますので、頭に入れておきましょう。

Q4:死亡一時金に相続税はかかる? 非課税の条件も

iDeCoの加入者が死亡し、遺族が受け取る死亡一時金は、相続税の課税対象(みなし相続財産)となります。

ただし、死亡から経過した年数(支給時期)によって、税金の計算方法が異なります。重要ですので、詳しく見てみましょう。

3年以内だと、死亡退職金として優遇→非課税に

iDeCoの死亡一時金は、みなし相続財産として扱われます。生命保険の死亡保険金や死亡退職金と同じ位置づけです。

死亡後3年以内に請求する死亡一時金(みなし相続財産)は「法定相続人数×500万円」までが非課税枠となります。

iDeCoの死亡一時金は、同じみなし相続財産である生命保険の死亡保険金と別枠で非課税枠が設けられています。

相続税の計算例

相続税は、基礎控除額(3,000万円+法定相続人数×600万円)を超える場合に課税されます。

また、死亡一時金(みなし相続財産)がある場合、「3,000万円+法定相続人数×600万円」に加えて「法定相続人数×500万円」までが非課税の対象となります。

計算メモ)
たとえば、法定相続人が妻・子ども計2人のケースで考えます。

基礎控除額:3,000万円+2人×600万円=4,200万円
死亡一時金の非課税枠:2人×500万円=1,000万円

つまり、基礎控除4,200万円と死亡一時金(みなし相続財産)の合計5,200万円を超えない限り、課税の対象となりません。

※相続税率は、相続財産の額と相続財産の分け方によって異なります。

死亡から5年超→みなし相続財産でなくなる

死亡日から5年経過しても死亡一時金を請求しない場合、受取人は請求権を失います。iDeCo資産は、法定相続人の共有財産へと扱いが変わります。

法定相続人の共有財産となった場合、遺産分割協議によって財産を受け取ることになります。
そのため、法定相続人全員で遺産分割の話し合いを実施し、iDeCoの死亡一時金についても、誰がいくら受け取るのかを決める必要があります。

その他の疑問あれこれ

相続放棄をしたら、どうなる?

iDeCoの死亡一時金は、死亡退職金と同じく相続財産に含まれない(みなし相続財産)と判断される可能性があります。
つまり、他の相続財産を放棄をしても、受取人はiDeCoの死亡一時金を請求する権利が残ると考えられます。

企業型確定拠出年金の扱いとは違う?

企業型確定拠出年金は、規約がそれぞれ変わるため、個別の規約を確認する必要があります。
従って、個人型確定拠出年金(iDeCo)とは異なる可能性があります。

遺族年金と死亡一時金の違いは?

遺族年金は、厚生年金や国民年金の加入者が死亡した際、その配偶者や子どもが受け取ることができる公的保障です。
死亡一時金とは、支払い対象者の条件が異なります

(文:ファイナンシャル・プランナー高橋成壽さん、編集・構成:SENECT編集部)

この記事の著者

高橋成壽(FP)

ファイナンシャル・プランナー高橋成壽(たかはしなるひさ)。保有資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)。1978年生まれ、神奈川県鎌倉市出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業。2007年、寿FPコンサルティング株式会社を設立。横浜を拠点とし、コンサルティングサービスを行う。NHK、朝日新聞、プレジデントなどメディアへの掲載実績多数。

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