NISAのロールオーバーを図示したイラスト

制度の解説

NISAでロールオーバー、やるべき人の特徴【デメリット・メリット】

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ロールオーバーってなに…? やったほうがいいの…? NISA(ニーサ)に加入した人が、非課税期間を終える5年後のタイミングで考えなければならない問題です。NISAの上手な引き際について、ファイナンシャル・プランナー伊藤亮太さんが解説します。

NISAをおさらい! 「非課税口座」と「課税口座」

2014年からスタートしたNISA(少額投資非課税制度)。

株式投資や投資信託、ETFなどの商品を購入し、NISA口座で運用すると、発生した利益が非課税となる制度です。

通常、課税口座(一般口座・特定口座)で運用すると、利益に対して20.315%の税金が発生するため、とてもおトクな制度として注目を集めています。

NISAの非課税メリットを示した図

利益100万円に対して「非課税」と「約20%課税」の比較イメージ
編集部スタッフ作成

NISAで投資可能な期間は2014~2023年まで。非課税の対象となる年間の投資枠は120万円。非課税期間は最長5年です。

では、非課税期間が終了する5年後、運用していた商品はどうなるのでしょうか…?

少し先の未来のことですが、NISA非課税期間が終わった後の対応方法について、ファイナンシャル・プランナー伊藤亮太さんが、パターン別に説明します。

ファイナンシャルプランナー伊藤亮太(いとうりょうた)さん

ファイナンシャル・プランナー伊藤亮太(いとうりょうた)さん

非課税期間が終わる5年後の選択肢は3つ!

NISAで5年間の非課税期間を終えたら、その後どうすればよいでしょうか? 「売却」「移管」「ロールオーバー」3つの方法が考えられます。

NISAの非課税期間が終わる5年後の選択肢は3つ「売却」「移管」「ロールオーバー」

編集部スタッフ作成


  1. 「売却」して損益を確定する
  2. 一般の「課税口座へ移管」する
  3. 「ロールオーバー」で、次の非課税期間へ繰り越す

(1)「売却」で現金化

まず(1)のケース「売却」について説明しましょう。

非課税期間が終了するタイミングで、保有する株式や投資信託を売却し、現金化したとします。

この場合、利益が出ていれば、その利益分は非課税となります。

しかし、損失が発生した場合はデメリット。NISA口座では、譲渡損失の繰り越し控除(※)が適用されませんので、なにもメリットは残りません。

※損失のマイナス分を向こう3年間の利益のプラス分と通算し、課税が免除される制度。NISA口座では対象外。

(2)「移管」→その後は課税対象に

2つめ。非課税期間が終わり、課税口座(特定口座や一般口座)へ「移管」すると、終了時点の価格までが非課税の対象となります。

例えば、NISA口座に120万円を投資します。非課税期間が終わった時点で150万円に上昇していた場合、30万円の含み益は非課税となります。

ただし、課税口座へ移管後、150万円以上に上昇した場合、その利益部分は課税対象となるので注意が必要です。

NISAで課税口座に移管した際のイメージ

編集部スタッフ作成

(3)「ロールオーバー」で延長→引き続き運用

そして、3つめの方法である「ロールオーバー」によって、非課税枠を次の期間へ繰り越すことができます。

例えば、2018年に購入した商品は2022年に非課税期間が終了します。

しかし、ロールオーバー(非課税期間の延長)を希望した場合、翌年2023年の新たな非課税枠に2018年から運用していた商品を、繰り越すことができます。

具体的なメリットやデメリットについては後述しますが、実質10年間、非課税枠で運用することが可能となります。

2018年から税制改正→ロールオーバーの上限撤廃に


  • 【改正前】120万円が上限
  • 【改正後】上限ナシ

これまでは、NISAの非課税投資枠の上限である120万円内でしか、ロールオーバーができない仕組みでした。

そのため、含み益が発生していたとしても、すべてをNISA口座(非課税口座)を継続して投資することができませんでした。一部を売却し、120万円の範囲内で繰り越すことを考える必要があったのです。

しかし、平成29年の税制改正により、ロールオーバーの上限枠が撤廃されました。

これにより、仮に120万円の投資が5年後に150万円となった場合でも、150万円分すべてを繰り越しできるようになりました。

もし、その後さらに運用がうまくいったとしても、非課税期間の売却であれば、増加分も非課税となるため、メリットが拡大したといえます。

ロールオーバーのイメージ図

編集部スタッフ作成

例えば、100万円が5年後に150万円に上昇し、ロールオーバーを行うケースを考えてみましょう。

さらに5年後に200万円になったとします。10年間で100万円が200万円へと増えたプラスの利益分100万円は非課税となります。

つまり、継続して非課税システムを活用できるメリットは大きいのです。

なお、NISA口座120万円の非課税枠を一部しか利用せず、ロールオーバーする額が120万円に満たない場合、120万円との差額分までを追加で購入できます。

このほか、2018年からは積立NISAがスタート。これは年間40万円までの枠内で額を設定し、コツコツ積み立て投資を行っていく制度です。

こちらの非課税期間は20年と長いのですが、NISAから積立NISAへのロールオーバーはできませんので注意。

NISAと積立NISAは、毎年いずれかを選択しなければならず、両方使えるわけではありません。

また、ジュニアNISAについては、1月1日時点で20歳未満の方が利用できる非課税投資(年間80万円の枠)の制度です。NISAと同様、非課税期間は5年と決まっており、その後ロールオーバーを行うことが可能です。

ロールオーバーにはどんなメリットがありますか?

ロールオーバーの一番のメリットは、非課税で運用できる投資額(元本)が増えていく可能性があることです。

複利効果をイメージしたイラスト

写真:mounel / PIXTA

上述のように、利益を非課税のまま、さらに運用に回すことができます。利益がさらなる利益を生み出す……いわゆる「複利効果」を期待でき、非課税の恩恵をさらに受けることができるかもしれません。

つまり、長期投資のメリットをふんだんにいかした投資が可能になります。

もし、売却して課税され、それをもう一度投資に回すと、非課税で運用できた場合よりも運用金額の増え方が少なくなることになります。

ロールオーバーでトクする人とソンする人

それではロールオーバーすべき人とはどのような人が該当するでしょうか。

継続して長期運用をしていきたい人はもちろんですが、非課税期間の終了時、含み損を抱えている人もロールオーバーを検討されるとよいでしょう。

もし、含み損を抱えたまま、通常の口座へ移管した場合には、非課税期間終了時の投資金額が投資元本と認識されてしまいます。

NISAでロールオーバーをするべき人とすべきでない人のイメージ

編集部スタッフ作成

例えば、120万円の投資で始め、5年後に80万円になったとしましょう。

このケースですと、損失が発生しているにもかかわらず、翌年からは80万円の投資スタートとみなされてしまいます。

つまり、80万円よりも上昇した場合、それが利益とみなされ、課税対象となってしまうのです。

なんとも不思議な話ですが、このような場合、今後上昇する可能性があると判断するのであれば、非課税期間をうまく使ってロールオーバーで繰り越すことも検討してみましょう。

そうすれば、先ほどのケースでいえば、80万円よりも上昇しても課税されないことになります。

ロールオーバーに注意点やデメリットはないですか?

NISAでロールオーバーを行う際、注意点はないのでしょうか?

一番注意していただきたいポイントは、2019年以降にNISAを利用して行う投資ではロールオーバーができない点です。具体的に、2019年から5年後の2024年以降はロールオーバーによる継続投資ができません。

なぜならば、NISA口座の利用期間は「2023年」までと決まっているからです。そのため、2018年までにNISAを利用して投資を行った分はロールオーバーが可能。それ以降の投資については、ロールオーバーができないことを頭にいれておきましょう。

それからもう一点。多くの金融機関では、非課税期間の5年が経過後、ロールオーバーするかどうかの通知がくるようです。しかし、金融機関によっては、連絡がないこともあるかもしれません。

非課税期間が満了となり、残高がある状態で手続きせずに放置したら、通常の課税口座に払い出されてしまった…なんてこともありえます。

そのため、ロールオーバーが適用される2019年以降を想定し、どう対応すべきか? の方針については、はやめに金融機関に問い合わせたほうがよいかもしれません。

以上、NISAのロールオーバーについて説明してきました。

くれぐれも投資は自己責任で行う必要があること。ロールオーバーしたからといって市況等によってはさらに利益が膨らむとは限りません。その後も継続すべきかどうか、企業分析や経済情勢の分析なども怠らないようにすべきです。

(文:ファイナンシャル・プランナー伊藤亮太さん、編集・構成:SENECT編集部)

具体的な手続き方法について(※編集部追記)

NISAでロールオーバーを行うにあたり、手続きはどのように進めるべきでしょうか?

NISAがスタートした2014年に購入した分の非課税期間は2018年12月末までとなっています。

2018年3月現在、SBI証券およびマネックス証券の公式ホームページを確認したところ、口座の移管には手続きが必要と記載されているものの、受付の開始時期や手続き方法については、未定とのこと。それぞれ準備、確定次第、案内されるそうです。

この記事の著者

伊藤亮太(FP)

慶應大学大学院商学研究科修了後、証券会社の営業・経営企画部門、社長秘書等を行い、投資銀行業務にも携わる。現在は、独立系FPとして、個人の資産設計を中心とした提案を行う。東洋大学経営学部非常勤講師、大手前大学通信教育部非常勤講師、千葉科学大学危機管理学部非常勤講師も務める。資産運用の講演は、日本証券業協会、金融庁、大阪証券取引所、SBI証券など多数実績あり。

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