ファイナンシャルプランナー伊藤亮太(いとうりょうた)さん

老後のお金

定年後のお金、ちゃんと考えたことありますか?【老後資金】

取材協力:

定年退職後の資産形成は、どのような視点を持つべきでしょうか? ファイナンシャルプランナー伊藤亮太さんに心構えをうかがいました。

ファイナンシャルプランナー伊藤亮太(いとうりょうた)さん

写真:編集部スタッフ撮影

2018年1月26日、高まる投資への関心を背景に、第1回目の開催を迎えた「資産運用 EXPO」。「現役時代から考える退職後のマネープラン」と題した講演が設けられました。

満席のなか登壇したのは、伊藤亮太FP事務所・伊藤亮太代表。会場に集った人々が熱心に耳を傾けました。

年代によって準備が違う

“現役時代”とひとことで言っても、20~60代と対象年代はさまざま。とくに、定年延長や年金の繰り下げなど60歳以降の働き方は、状況が大きく変わるかもしれません。

伊藤さんは、老後資金・退職後のマネープランについて、「まず最初に、年代別に考えていく必要があります」「期間が重要です。早ければ早いほど良いに決まっていますが、10年なのか20年なのか30年なのか……皆さんが今、どこにいるか、年代別で運用方法は変わってきます」と前置きします。

40代の資金ニーズ

住宅ローンのイメージ写真

写真:xiangtao / PIXTA

40代くらいから本格的に老後資金の準備を始める方が多くなると思います。例えば、家のローンもある程度、片がついた。もしくは返しながら、いかに老後資金を準備するか? といった状況に差しかかってきます。

また、最近多いのが親の介護。どうしても、いろんな問題がはらんでくるのが40代だったりします。

そういったところも考慮しながら、退職後のマネープランだけでなく、時間のプランも考えていく必要があります。

50代の資金ニーズ

40代に対し、50~60代の方は時間が限られています。なので、できる範囲でいかに資金を貯めていくか考えていきます。

子どもの教育資金について、晩婚化が進んでおりますので、まだ子どもが大学を卒業していないケースがあるかもしれません。すると、まずそっちのお金が必要ですよね。

逆に、もう全部済んだという方は、当然、老後資金を本格的に考えることになります。ですので、別に50代だから遅いっていうわけでありませんのでね。おそらく本格的に考えることができるのは、50代からになると思います。

60代の資金ニーズ

年金

写真:dorry / PIXTA

60代の方々は、まさに差し迫った状況になりますから、退職金も含めてある程度資金が貯まっている状態が望ましいですね。

ただ、問題点はですね、昨今言われていますけど、「年金」。必ず満額を受け取ることができるわけではない状況が来るでしょうから、差っ引いて考える必要がありますね。

目一杯もらえるっていう発想は、できるだけ考えない方が良いかな? とは思います。

老後資金は1,100万円?

「実際、いまの65歳以上の方々がどんな生活をしているのか説明していきます。結論から知っていただければ結構です」(伊藤氏)

あくまで参考ですよ。公的年金とか、働いた収入とかも全部含めて、いまの高齢者世代の方々は、1ヵ月におよそ20万8千円の収入があるのが一般的なんですね。

収入に対して、1ヵ月でどれくらいのお金を使っていますか? 実際の数字、支出23万9千円って書いてあります。これが一般的な通常のケース。

それで、引き算すると、毎月3万1千円くらいのマイナスになるんですよ。マイナスを貯金や退職金から取り崩していく必要があります。

家計調査のモデルケースを参考に月3万1千円のマイナス収支を紹介。

さらに、1年単位、老後30年のケースで試算を続けます。

3万1千円に12ヵ月を掛け算します。1年で37万円くらいになります。

それで、60歳か65歳くらいから仮に30年間生きていたとすると、37万円に30かけていただくと、1,100万円くらいになります。

「なんだ、1,100万円でいいのか!」と思われる方、「1,100万円か……」って思われる方がいると思いますけども、これがいまの実態なんです。1,100万円くらい足りないっていう話ですね。

この数字は、ふつうに生活し、旅行とかあまり行けないですよ、正直。絶対必要ってラインです。

本当に1,100万円でいいですか?

「じゃあ、このお金でいいですか? って話になりますよね。1,000万円くらいでいいのかなって。退職金をもらえるのであれば、十分確保できるかと思います。でも、“欲しい金額”はこっちなんです」(伊藤氏)

説明資料より編集部作成
調査結果の出典:野尻哲史『老後難民 50代夫婦の生き残り術』,講談社,2010,p.33.(講談社+α新書)

「老後資金ってどれくらいほしいですか? 公的年金以外で」ってクエスチョンとったやつです。

年収によって答えが違ってくるのですが、大体3,000万円前後って回答している方が多いのです。

60歳とか65歳の時に、1,000万円ちょっとあればなんとかなるのかな…って感じになるのですが、希望としては3,000~4,000万円くらい欲しいっていうのが、皆さんの意見になっています。

だってこれから年金は削減されますよね

ファイナンシャルプランナー伊藤亮太(いとうりょうた)さん

写真:編集部スタッフ撮影

私も1,000万円じゃ心細いと思います。だってこれから年金は削減されますよね。人口減等で減っていく可能性もあるわけですから。

そう考えると3,000万円くらいを目標に立ててもらって、それがご自身の中でプランとして構築できるだろうか? そこを考えてもらうと良いのではないかと思います。

では、3,000万円?

伊藤さんが次に話したのは老後資金3,000万円の数字について。

「実はいろんな数字から、3,000万円っていうのはある意味妥当性があります。ちょっと違うデータもお見せしたいんですけども」(伊藤氏)

男性で平均寿命が83、84歳。女性が89歳位だと思いますが、これで計算すると、2,000万円くらい足りないとなります。

よく言われるのですが、「ゆとりある生活」には月35~36万円くらいお金が欲しいっていうことになるんですね。海外旅行とか国内旅行とかバンバン行きたい方は、こっちを目安にしたほうがいいとは思います。それで計算すると、大体5,600万円くらい不足すると。

なので、残念ながら答えはないのです。1,000万円でもいい。足りない人は6,000万円くらい必要ってなりますので。ここは皆さんの考え方次第になります。

リタイア後の資金、3つに分けて準備

数字の将来図を示した後は、「準備の仕方」について話が及びます。

伊藤さんはまず、老後資金を3つに区分することを勧めます。


  • 生活資金(毎月かかる費用)
  • 予備資金(病気・事故への備え)
  • ゆとり資金(楽しく過ごすための資金)

大事なのは「生活資金」「予備資金」

絶対必要なのが上2つですよ。最低1,100万円くらい。できれば2,000万円。これくらいは絶対必要ですよと。

そして、病気になった場合の備え。保険入っている方は、カバーできるわけですけど、範囲がどこまでかは確認されたほうが良いですね。

「昔入ったやつ、なんだっけな? 全然足りないじゃない」ってなるかもしれません。なかなか保険を見直す機会ってないかもしれないので。

一般的なケースですと、300~500万円くらいは万が一に備えて蓄えている方は結構いらっしゃいます。「ゆとり資金」は考え方次第ですから、皆さん全員違ってきます。

運用の考え方

資産運用のイメージ写真

写真:ふじよ / PIXTA

「運用結果はいくらにしたいですか? 皆さん、これくらい欲しいっていう数字を想像してください」(伊藤氏)

さらに、自分が置かれた年代を意識すれば、「運用期間」も浮かび上がります。伊藤さんは、「結果」と「期間」を把握できれば、おおよそ何%で運用すべきか、逆算できるとアドバイス。

運用に回すのは「余裕資金」から

投資運用のためのお金を「余裕資金」、それ以外を「生活防衛資金」「使用予定資金」とします。


  • 生活防衛資金+使用予定資金(向こう5~10年で使うお金)
  • 余裕資金(長期間にわたって運用できる資金)

私の勝手な言葉ですけども、「生活防衛資金」と「使用予定資金」

単身の方かご家族がいるかで変わってきます。単身の方であれば、5~10年も必要ありません。半年分くらいの生活資金があれば十分だと思います。毎月の生活費、だいたい半年分くらい現預金で確保してください。

一方、ご家族、とくにお子さんがいる場合は、教育費が絡んでくるでしょうから、5~10年で使うお金は、現預金の方がいいと思います。

余ったお金が「余裕資金」に入ってきます。まず、このお金が運用できる資金になります。

毎月、どのくらい貯金してる?

毎月どれくらい貯金できていますかね?

参考程度ですけど、20%以上蓄えている方はOKだと思います。毎月の給料の2割以上。額面ですよ、手取りじゃないですよ。

年収で言うと1,000万円以上の方々の平均貯金が25%なんですよ。まあ、年収関係なくて結構ですから、2割以上は貯金できていると、結構運用に回すことができます。

ただ、そこができていないと、そもそも余裕資金が蓄えられないってなっちゃいますから。ぜひ2割以上は目標にやってください。ちゃんとお金蓄えている方は、2割以上貯金しているのが一般的ではありますね。

商品のリスク・リターン

準備した余裕資金を運用に。ただ、商品の選択肢は多岐にわたります。ここでは、商品の大枠に触れていきます。

余裕資金の運用の考え方

説明資料より編集部作成

基本的には「貯める」ことが主体にはなってくると思います。定期預金、普通預金、あと保険型の商品とか。

絶対コレっていうのはないのですが、組み合わせていかに利益を取っていくか考えていく必要があるんですね。

リターンとリスクの関係がありますので、当然利益が大きく増えるものは、変動も大きくなります。外国株の場合だったら、株価の変動と為替の影響も受けますから。

それで、株だけやるっていうのも、それは相当リスクです。逆に預貯金だけってのもリスクだとは思いますよ。全く増えませんから。増やすっていう観点からみると、やっぱりいくつか組み合わせて運用していかなければいけない。

投資信託商品のリスクとリターンを示した図

説明資料より編集部作成

商品の組み合わせ例

一応言っておきますけれども、余裕資金の話です。必要な資金は除いてます。それを除き、運用するお金の中でどのくらい割合を決めるかは、当然ご自身によって変わってきます。

例えば、「安定運用」はどっちかっていうと50~60代の方向けですかね。一方、20~30代の方の場合は、どちらかというと「積極運用」でもいいかなと思っています。

緑色は債券って書いてますけれども、預貯金にしていただいても結構です。

投資信託のポートフォリオ例(安全運用・基本運用・積極運用)

説明資料より編集部作成

海外の株式や日本の株式を何%くらい含めるかってところですね。できれば、少なめの方がいいと思います。ある程度、株式の比率を高めるってところですね。

「基本パターン」は全部均等になった場合なのですが、必ずこう分ければいいっていうわけではありません。結果が良くなかったら意味ありませんのでね。

私が思うのは、1年後なのか2年後なのか3年後の話なのか、15年後なのか20年後の話なのかでは、全然変わってきます。最後増えてなかったら意味がありません。

資産運用っていうのは、当たり前ですけれども、こういう配分をしたから絶対良いわけではありません。ある程度、利益が出たら売ることも考えなきゃいけません。そこを意識して、これからの資産運用に取り組んだ方がいいと思います。

この記事の取材協力

伊藤亮太(FP)

慶應大学大学院商学研究科修了後、証券会社の営業・経営企画部門、社長秘書等を行い、投資銀行業務にも携わる。現在は、独立系FPとして、個人の資産設計を中心とした提案を行う。東洋大学経営学部非常勤講師、大手前大学通信教育部非常勤講師、千葉科学大学危機管理学部非常勤講師も務める。資産運用の講演は、日本証券業協会、金融庁、大阪証券取引所、SBI証券など多数実績あり。

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