イデコのロゴと男性

制度の解説

50歳代からのiDeCoは、こうなる【損益シミュレーション】

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現在、50歳代。「イデコは、年齢的に遅いかな……?」50歳代から始めるiDeCo(イデコ)のメリットとデメリットについて、ファイナンシャルプランナー・大間武さんが分かりやすく整理、解説します。老後資産を少しでも増やすには、どんな使い方がいいの?

ファイナンシャルプランナー大間武さん

ファイナンシャルプランナー・大間武(おおまたけし)さん

イデコのメリットは大きく3つ

個人型確定拠出年金(こじんがたかくていきょしゅつねんきん)ことiDeCo(イデコ)は、各個人が自ら加入し、自ら掛金(※)や金融機関、運用商品を決定し、60歳以降に年金または一時金として受け取る仕組みです。20歳以上60歳未満ほぼすべての人に加入資格があります。

自らの意思で行う点が、従来の国民年金や厚生年金等の確定給付型年金と違います。

※「掛金(かけきん)」とは、定期的に積み立てていくお金。

iDeCoには、税金が戻ってきたり、安くなる3つの税制メリットがあります。

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の税制メリット3つを示した図

編集部スタッフ作成


  1. 「掛金を払う時」
  2. 「運用中」
  3. 「受け取る時」

1:iDeCoでは掛金を拠出(※)しながら、金融商品を運用。拠出額がすべて所得控除(※)の対象に。毎月積み立てるだけで大きな節税効果があります(減税効果については、次章で説明)。

※「拠出(きょしゅつ)」とは、掛金を払うこと。
※「控除(こうじょ)」とは、税金を計算する上で一定額を差し引き、免除すること。

2:通常、金融商品を運用して得た利益には、約20%の税金がかかります。しかし、iDeCoでは運用益が非課税。効率良く資産を増やすことができます。

3:iDeCoで積み立てた資金を受け取る際、退職所得控除や公的年金等控除などの税制優遇を受けることができます。

50歳代が「拠出前」に知るべきポイント

以下、ファイナンシャルプランナー・大間武さんが説明します。

50歳代以降でも節税効果のメリットは十分

例えば、50歳の方が月23,000円の掛金を拠出した場合、年間の掛金は276,000円。

この金額が所得税および住民税を計算する際、所得から控除されて納付税額が決まります。

所得税率を20%、住民税率を10%とした場合の年間の減税効果は、

計算)

所得税:276,000円×20%=55,200円
住民税:276,000円×10%=27,600円
合計:55,200円+27,600円=82,800円

となります。

上記金額は1年間の節税額ですから、加入期間が…

3年だと248,400円

5年だと414,000円

8年だと662,400円

一般的に50代は、他の世代と比べ、所得が多く税率も高いため、節税のメリットがさらに大きくなります。そのため、iDeCoを50代から始めても、節税効果は十分あると思います。

チャートをみる夫婦(イラスト)

イラスト:studiolaut / PIXTA

加入期間が短いとデメリット→受給開始年齢が“遅くなる”

iDeCoは、60歳で積み立て期間が終了します。50代でiDeCoを始める場合、10年程度が終了のタイミングとなります。

同時に、新たな掛金の拠出ができなくなり、所得控除のメリットは消滅。積み立てた資金を受け取る権利が発生し始めます。

受け取り開始時期は、原則60歳~70歳の間で、加入者が自由に決めることができます。

しかし、60歳時点で通算加入者等期間が10年に満たない場合は注意。
以下の表のように、受給開始年齢は段階的に引き上げられ、最長65歳となる点がデメリットとなります。

60歳時での加入期間 受給可能な年齢
10年以上 60歳~
8年以上 61歳~
6年以上 62歳~
4年以上 63歳~
2年以上 64歳~
1ヵ月以上 65歳~

iDeCoに50代で加入すると、この通算加入者等期間(※)が10年未満と短くなる可能性に注意しましょう。積み立て金を60歳で引き出すことができず、受給開始年齢が遅くなる場合があります。

例)
54歳でiDeCoに加入し、通算加入者等期間が60歳時点で6年の場合、62歳で引き出しが可能。

※「通算加入者等期間(つうさんかにゅうしゃとうきかん)」とは、加入者または加入者であった方が60歳に達した時点で、<企業型確定拠出年金の加入者期間および運用指図者期間>と<個人型確定拠出年金の加入者期間および運用指図者期間>の各期間を合計したもの。

60歳以降は「運用指図者」に→手数料に注意!

ideco(イデコ)のイメージ図

イラスト:mounel / PIXTA

前述のようにiDeCoは、積み立て期間終了となる60歳以降は、新たな掛金の拠出はなくなり、受給開始時まで運用のみとなります。

この際、掛け金を支払わずに運用方法の指示だけする人を「運用指図者(うんようさしずしゃ)」と呼びます。

なお、運用指図者となった場合でも、一定の口座手数料が必要です。

楽天証券でシミュレーション 口座開設から受給終了までの「手数料」

例えば、52歳でiDeCoに新規加入し、8年間にわたって毎月23,000円を拠出
積み立てた資金を、61歳から5年間にわたり2ヵ月に1回(年6回)のペースで受給する場合、必要となる手数料を計算してみたいと思います。

なお、「楽天証券」で口座開設したケースを想定しています。

計算)

(1)加入時の事務手数料
2,777円(国民年金基金連合会への口座開設手数料)

(2)加入期間の口座管理手数料(8年間を想定)
月額103円×12ヵ月×8年=9,888円(国民年金基金連合会への手数料)
月額64円×12ヵ月×8年=6,144円(事務委託先金融機関への手数料 ※この場合は信託銀行)
月額0円(運営管理機関への手数料 ※楽天証券は無料)

(3)60~61歳まで運用期間の手数料(運用指図者の1年間)
月額64円×12ヵ月×1年=768円

(4)受給開始から終了までの期間(61~66歳までの5年間)
給付1回あたりの手数料432円×年6回×5年=12,960円

(5)受給期間も運用を行っているため(3)と同じ手数料5年分が発生
月額64円×12ヵ月×5年=3,840円

(6)手数料の合計
2,777円+9,888円+6,144円+768円+12,960円+3,840円=36,377円

※上記手数料は、消費税率8%で計算された金額のため、税率に伴い、変更となる可能性があります。

金融商品、どう選ぶべき?「運用」のポイント

元本割れのリスクを考え、「元本確保型」の比率を高く

運用商品のリスクとリターン度合いを示したイメージ図

運用商品のリスクとリターンの度合い(イメージ)
編集部スタッフ作成

50歳代からiDeCoに加入すると、運用期間が10年程度と短く「時間」を活かした分散投資の効果や複利効果を得られにくいデメリットがあります。

そのため、掛金を「価格変動型(価格が変動する商品)」に多く振り分けることが難しい状況に。

「元本確保型(定期預金や保険等の商品)の保有割合」を高くし、「資産を減らさない運用」を心がける必要があります。

【参考】:イデコ(個人型確定拠出年金)で『定期預金』を選ぶ前に知っておくべきこと

商品の選び方(ポートフォリオ例)

しかし、「運用なのだから、少しでも増やしたい」「でも、減るのは心理的に良くない」など様々な感情が交錯するかと思います。

そこで、一つの考え方を示します。

50代の方がiDeCoを活用し、自分年金づくりを短期間で行うための商品の選び方は「減税効果の範囲内で、投資商品を選ぶ」ことです。

以下、前述のモデルケースを想定し、具体的な数字で示します。

モデルケース)

・52歳でiDeCoに加入
・8年間、毎月23,000円を拠出
・61歳から5年間、2ヵ月に1回(年6回)のペースで受給

先ほど示した<口座手数料の総額>は、36,377円でした。

また、この期間(8年間)の<減税効果>は、662,400円でした。

この<減税効果>から<口座手数料の総額>を差し引いた金額626,023円(662,400円-36,377円)を基準にします。

「減税効果」と「口座手数料」を比較するイメージイラスト

イラスト:saki / PIXTA

  
8年間の掛金の総額は23,000円×12ヵ月×8年=2,208,000円です。

この金額に対する626,023円の割合は28.35%。

つまり、最大28%分は、価格変動型の金融商品で運用可能と言えます。

この減税効果分から必要なコスト(口座管理手数料等)を差し引いた範囲内を、投資商品の運用における一つの目安として考えてみるのも良いかもしれません。

ただし、減税効果や口座管理手数料等のコストは常に変動します。その点も考慮し、価格変動型へ投資する割合を決めてもらえればと思います。

受け取り方で差が出る?「受給時」のポイント

iDeCoで積み立てた資金を受給する方法は3つ。


  1. 「一時金」
  2. 「年金」
  3. 「一時金と年金の併給」

「一時金」の場合、退職所得控除が適用

まとめて「一時金」で受け取った場合、所得税を計算する上で「退職所得(たいしょくしょとく)」として扱われ、「退職所得控除(たいしょくしょとくこうじょ)」が適用されます。


  • 「退職所得」=(源泉徴収前の収入金額-退職所得控除額)×1/2

加入期間(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円×A
20年超 800万円+70万円×(A-20年)

出典:国税庁ホームページより編集部作成

たとえば、50歳から10年間iDeCoに加入し、積み立てたお金「276万円」を、一時金として受け取ります。

その場合、「加入期間20年以下」に相当する「40万円×10年=400万円」が退職所得控除額となります。

よって、退職所得を計算すると、「276万円ー400万円」と控除額400万円が積み立て金276万円を上回るため、所得税は0円となります。

なお、同じ年に複数の退職金等を受け取る場合、受け取った退職所得の合計から退職所得控除を差し引くので、所得税が課税されるケースもあります。

また、退職所得控除を超える金額の退職金等を受け取る場合、iDeCo積み立て金の受給年をずらすことで所得税を軽減することができます。

「年金」の場合、公的年金控除が適用

「年金」は、期間と回数を選び、iDeCoの積み立て金を取り崩しながら受け取ります。

その場合、所得税を計算する上で「雑所得(※)」として扱われ、「公的年金等控除(こうてきねんきんとうこうじょ)」が適用されます。

※「雑所得(ざつしょとく)」とは、課税所得の区分の一つ。給与所得や配当所得などと合わせて総合課税の対象となり、税金が計算されます。


  • 「雑所得」=「iDeCoを含めた公的年金等の収入金額」-「公的年金等控除額」

公的年金等の収入額(=A) 公的年金等控除額
120万円以下 全額
120万円超330万円未満 120万円
330万円以上410万円未満 (A×25%)+37.5万円
410万円以上770万円未満 (A×15%)+78.5万円
770万円以上 (A×5%)+155.5万円

受給者65歳以上の公的年金等控除額
出典:国税庁ホームページより編集部作成

例えば、50歳から10年間iDeCoに加入し、積み立てたお金「276万円」を65歳から10年にわたって年金で均等に受け取ったとします。

その場合、「1年間で27.6万円」の収入に対し、公的年金等控除額は「120万円」。

よって、「27.6万円-120万円」を計算すると、控除額が上回るため所得税は0円となります。

ただ、この27.6万円以外に年間100万円の公的年金等がある場合、27.6万円+100万円-120万円=7.6万円となり、この7.6万円に対して所得税が課税されることになります。

公的年金(国民年金+厚生年金)の受給開始年齢は、原則65歳です。開始を遅らせる繰り下げ受給によって、iDeCoの積み立て金とずらして受け取り、税金を抑える方法もあります。

「併用」を上手に使う

年金手帳と男性(イラストイメージ)

イラスト:makaron* / PIXTA

50代でiDeCoに加入し、年金等を受け取る方法として「一時金」と「年金」を紹介しました。

もう一つの手段として「一時金」と「年金」の併用があります。これは、受給開始時に一部を一時金で受け取り、残りを年金で受け取る仕組みです。

では、「一時金」「年金」「併用」どれが一番お得なのか考えてみましょう。

税金を計算する上で考慮すべきなのは「控除」です。税率を掛ける前に所得から差し引く各種控除は金額も大きく、所得の種類によってそれぞれ設定されています。

iDeCoの場合、受け取り方によって、退職所得控除と公的年金等控除が適用されます。

先ほど説明しました「併用」は、退職所得控除と公的年金控除の両方を適用できる方法でもあるわけです。

それであれば、この控除を最大限活用することこそが、最もお得な方法だと考えます。

具体的な考え方として、iDeCoの受給開始時に、未使用の退職所得控除を最大限活用し、一時金を受け取ります。そして、残りを年金で受け取り、公的年金等控除を活用する考え方です。

この記事の著者

大間武(FP)

大間武(ファイナンシャル・プランナー)。保有資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)、プロフェッショナルCFO、証券外務員二種、日商簿記一級。2005年に株式会社くらしと家計のサポートセンター、NPO法人マネー・スプラウトを設立。「家計も企業の経理も同じ」の考えを基本とし、家計相談や会計コンサル、監査関連の業務など幅広く活動。

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