ファイナンシャルプランナー大間武さん

制度の解説

【ジュニアNISAで生前贈与】賢く、相続税を減らす方法は

著者:

相続の発生を待たずに、子どもや孫への贈与活用ができる「ジュニアNISA」。使いこなすには、まず贈与税の基礎知識をおさえましょう。また、相続税対策として有名な「生命保険」や「教育資金贈与信託」とのメリット・デメリット比較、使い分けについても整理していきます。

ファイナンシャルプランナー大間武さん

ファイナンシャルプランナー・大間武さん

相続対策ができるジュニアNISAとは

0~19歳までの未成年を対象にしたジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)。

生前贈与でジュニアNISAを活用すると相続財産が減り、相続税の負担を軽減できます。

仕組みとメリット

ジュニアNISAとは、日本に住む0~19歳の未成年者を対象にしたNISA(少額投資非課税制度)のこと。2016年にスタートしました。

ジュニアNISAの投資上限は年間80万円まで最長5年間、最大400万円の投資によって得た収益が非課税となるのがメリット(通常なら約20%課税)。

ただし、一般的に口座の運用や管理をするのは、両親や祖父母など大人の代理人。

“生前贈与”によって、投資の資金を準備することも多いため、贈与税や相続税の仕組みを理解することで、より賢くジュニアNISAを活用できます。

目的は「教育資金づくり」と「資産移転」

ジュニアNISAは、2016年に創設されました。制度がはじまった背景には、子や孫の将来を考えた教育資金づくり、高齢層の金融資産を若年層に移転させることが目的とされています。

以下、ファイナンシャル・プランナー大間武(おおまたけし)さんに解説いただきます。

ファイナンシャルプランナー大間武さん

ファイナンシャル・プランナー大間武さん

ジュニアNISAで「暦年贈与」

まず、贈与税の基礎知識をおさらい!

はじめに贈与税の基本を確認しましょう。

【贈与税とは】

贈与税とは、個人から財産をもらった時に発生する税金です。

課税期間は1月1日~12月31日まで(暦年と呼びます)。
その期間に贈与された財産の合計額が、課税対象となります(暦年課税と呼びます)。ちなみに、所得税の課税対象期間も同じく暦年課税です。

【贈与税の基礎控除】

贈与税の基礎控除額(※)は110万円です。年間110万円の範囲内であれば非課税となります。

※基礎控除額(きそこうじょがく)とは、納税者の負担を軽減するため、無条件に差し引かれる一定の金額。

【相続税と贈与税の違い】

相続税は、ある人(被相続人)の死亡時に、相続人等に財産がわたされることで発生する税金です。

一方の贈与税は、ある人(贈与者)が存命中に、財産を受贈者にわたすことによって発生する税金です。

相続税の税率と贈与税の税率は異なり、贈与税のほうが相続税よりも高く設定されています。これは、贈与税が相続税を補完する役割をもつことが理由です。

【贈与税の計算式】

1年間で贈与された財産の合計額基礎控除額(110万円)}×贈与税率控除額贈与税の金額

贈与税の計算例(図解)

編集部スタッフ作成

【贈与税率と控除額(表)】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% なし
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超え 55% 400万円

一般贈与財産の贈与税率

平成28年以降、贈与税の税率は「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されています。

一般贈与財産とは、たとえば「兄弟間の贈与」「夫婦間の贈与」「親から子への贈与で子が未成年者の場合」などのケースを指します。

特例贈与財産とは、その年の1月1日において、「直系尊属(祖父母や父母など)から20歳以上の者(子・孫など)」への贈与を指します。

【ジュニアNISAにおける贈与税の扱い】

ジュニアNISAで贈与した財産の金額とその他の財産の合計額が、贈与税の基礎控除枠(110万円)を超えると贈与税が生じる点に注意が必要です。

ジュニアNISAで生前贈与し、非課税になるケース(計算例)

「生前贈与なしの相続」と「ジュニアNISAを活用して生前贈与」それぞれのケースで相続税はどのくらい差がつくでしょうか?

事例を紹介し、ジュニアNISAの節税効果(相続税が非課税になるケース)を見ていきます。

条件)
家族構成:祖父、祖母、子2人、孫4人
相続財産の合計額:6,400万円(基礎控除前、ジュニアNISAの贈与前)

【生前贈与なしの場合】

まず、財産の合計額から相続税の基礎控除額(※)を差し引きます。相続人は祖母(妻)、子2人の3人です。

6,400万円-(3,000万円600万円×3人)=1,600万円

※相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。

次に、法定相続分で分割し、相続税の課税価格を計算します。

祖母(妻):1,600万円×1/2=800万円
子1:1,600万円×1/4=400万円
子2:1,600万円×1/4=400万円

最後に、課税価格より相続税の総額を計算すると、

祖母(妻):800万円×10%(税率)=80万円
子1:400万円×10%(税率)=40万円
子2:400万円×10%(税率)=40万円

80万円+40万円+40万円=160万円(相続税額の総額)

ジュニアNISAを活用しない場合、160万円の相続税がかかります。

【ジュニアNISAを活用した生前贈与】

ジュニアNISAを活用する場合、孫4人で合計1,600万円(孫1人あたり年間80万円×5年=400万円)を生前贈与。贈与した分だけ祖父の相続財産が減少し、結果的に相続税も減らすことができます。

ジュニアNISAで生前贈与する比較例(図解)

イメージ例:編集部スタッフ作成

6,400万円1,600万円(ジュニアNISAにより生前贈与した金額)4,800万円

相続税の基礎控除を差し引くと、

4,800万円-(3,000万円600万円×3人)=0円

よって、相続税は0円

ジュニアNISAを活用した生前贈与によって、160万円を節税(非課税)できる結果になりました。

他の相続対策との違いは?

祖父母から孫世代への相続税対策で有名なのが、生命保険教育資金贈与信託。この章では、ジュニアNISAとの比較をします。

ジュニアNISAと「生命保険」の相続対策の違い

ジュニアNISAも生命保険とも相続税対策の目的は同じですが、大きく次のような違いがあります。


  1. 資金を受けとる時期
  2. 税金の対象
  3. 非課税枠が確定or不確定
  4. 資金を自由に使える時期

【資金を受けとる時期が違う】

ジュニアNISAは相続が発生する前に、贈与として資金を受けとりますが、生命保険は相続の発生後に受けとります。

【税金の対象が違う】

ジュニアNISAは贈与税の非課税、生命保険は相続税の非課税。対象となる税金が違います。

【非課税枠が確定or不確定】

ジュニアNISAの非課税枠は年間80万円。つまり、5年間で400万円と限度額が決まっています。

一方、生命保険の非課税枠は、相続が発生した時点の法定相続人の人数によって変わるため、生命保険の契約時には確定していません。

【資金を自由に使える時期が異なる】

ジュニアNISAは資金が贈与された後、口座の開設者が18歳になった時点で払い出しを行うことができます。つまり、払い出しの時期が確定しています。

一方、生命保険は被保険者が亡くなることで保険金が支払われるため、時期が不確定といえます。

ジュニアNISAと「教育資金贈与信託」の違い

「教育資金贈与信託」とは、教育資金の一括贈与に限り、1人あたり1,500万円まで贈与税が非課税となる制度。

祖父母から孫世代への資産移転および受けとる時期は同じですが、使用目的が大きく違います。

ジュニアNISAの相続対策と教育資金贈与信託は、ともに贈与契約が行われ、資金が移動した時点で成立する点は同じです。

ジュニアNISAに大きな制限はありませんが、教育資金贈与信託は一定の教育資金を目的としているため制限があります。

失敗しないために!【注意点Q&A】

最後に、贈与目的で加入するジュニアNISAの注意点や疑問点を項目ごとに見ていきます。

5年分の投資資金を、一括で渡してもいい?

A.贈与税の基礎控除額110万円を超えた分は、課税されます。

ジュニアNISAは年間最大80万円の投資枠が5年間非課税となる制度。
たとえば、5年分の400万円の資金を一括で渡してしまうと、贈与税の基礎控除額110万円を超え、超過分は贈与税33.5万円が課税されます。

計算例)
(400万円-110万円)×15%-10万円=33.5万円

※基礎控除後の課税価格300万円以下の税率は15%・控除額は10万円

本来、相続税対策が目的のはずですが、相続税よりも高い税率で課税されるのでデメリットしか残りません。もし、ジュニアNISAを活用するのであれば、毎年80万円ずつの贈与をオススメします。

1人の孫が複数の祖父母から貰ったら?

A.贈与税の基礎控除額110万円を超えた分は、課税されます。

贈与税は受贈者(孫)が基準となります。つまり、贈与された人が贈与税を支払います。

贈与者が複数人いる場合、合計額が1年間に贈与税の基礎控除額110万円を超えないように注意が必要です。

たとえば、複数の祖父母から1人の孫に合計200万円贈与したケース(祖父から孫に100万円、祖母から孫に100万円)で計算します。

計算例)
(100万円+100万円-110万円)×10%=9万円

※基礎控除後の課税価格200万円以下の税率は10%・控除額はナシ

結果、9万円の贈与税が課税されてしまいます。ジュニアNISAを活用した相続税対策をする場合、親族の意向も踏まえながら、上手に贈与を行っていただきたいと思います。

払い出しに制限があるって本当ですか?

A.口座開設者が18歳になる以前に、ジュニアNISA口座から払い出しを行うと、過去の利益(運用益)が課税対象となります。

また、18歳の誕生日ではなく3月31日が払い出しの大きな基準日となります。

つまり、3月31日の時点で18歳であればその年から払い出しが可能、18歳になっていなければその年の払い出しはできません。

なお、上記とは別に災害等やむを得ない事由によって、非課税での払出しが例外的に認められるケースもあります。

もし、贈与中に死亡したら?

A.生前贈与加算(せいぜんぞうよかさん)が適用される可能性がある。

ジュニアNISAで生前贈与をおこなっている途中、もしくは贈与終了後3年以内(相続開始前3年以内)に贈与者が死亡した場合、生前贈与加算(せいぜんぞうよかさん)の制度により、相続税が課税されるケースがあります。

生前贈与加算とは、相続または遺贈によって財産を得た人が、死亡者(被相続人)の死亡日前(相続開始日)3年以内に贈与を受けていた場合に適用される制度。贈与時の財産の価額がもち戻しされ、相続税の課税価格として加算されます。

つまり、ジュニアNISAでの贈与後3年以内に亡くなった場合、贈与税ではなく相続税の扱いとなる可能性があるので、注意が必要です。

「連年贈与」に注意

連年贈与とは、毎年同じ金額を複数年にわたり贈与すること。

たとえば、「5年にわたって毎年80万円の金額を贈与する」といった契約(約束)を行った場合、連年贈与と判断されてしまうことがあります。
つまり、毎年の贈与(暦年贈与)ではなく、将来にわたって一括で定期金に関する権利(※)を受贈したと扱われ、贈与税が課税されることになります。

連年贈与として扱われないようにするためには、毎年贈与契約書を作成し、契約を行う(記録を残していく)ことが必要となります。

※定期金に関する権利とは、一定期間にわたって金銭等の給付を受ける権利。個人年金保険などが該当します。

【合意は親権者】

贈与契約をする際は、贈与者(財産をわたす人)と受贈者(財産を受ける人)双方の意思を確認します。しかし、ジュニアNISAは、受贈者が未成年者となるため、親権者が契約の合意を判断します。

ジュニアNISAで贈与者と受贈者が合意した場合、贈与契約書には3者(贈与者、受贈者、親権者)で署名捺印をします。

贈与税を申告する必要はある?

A.基礎控除額の枠内であれば、申告する必要はない。

ジュニアNISAと他の贈与も含めて、1年間で贈与税の基礎控除額の範囲内(110万円)であれば、贈与税を申告する必要はありません。

しかし、ジュニアNISAも含めて年間110万円を超える贈与があった場合や、教育資金の一括贈与など贈与税の申告書を提出することによって非課税が適用される制度については、申告が必要です。

「教育資金の一括贈与」を併用したら、非課税枠はどうなる?

A.教育資金の一括贈与の非課税枠(1,500万円以内)は、贈与税の基礎控除枠(年間110万円)とは別口。

ジュニアNISAは、通常の贈与税の基礎控除に関連する制度です。
一方、教育資金の一括贈与の非課税枠は、贈与税の基礎控除とは別枠で設けられている制度であるため併用が可能です。

ジュニアNISAで生前贈与をする場合は、これら制度の基本を踏まえ、賢く活用しましょう。

この記事の著者

大間武(FP)

大間武(ファイナンシャル・プランナー)。保有資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)、プロフェッショナルCFO、証券外務員二種、日商簿記一級。2005年に株式会社くらしと家計のサポートセンター、NPO法人マネー・スプラウトを設立。「家計も企業の経理も同じ」の考えを基本とし、家計相談や会計コンサル、監査関連の業務など幅広く活動。

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