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制度の解説

FPが教える! 個人型確定拠出年金(iDeCo)で、定期預金を選ぶ条件

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個人型確定拠出年金ことiDeCo(イデコ)で、投資信託ではなく『定期預金』を選ぶメリット・デメリットは? ファイナンシャル・プランナー杉浦恵祐さんに解説いただきました。順を追ってみていきましょう。

ファイナンシャルプランナー杉浦恵祐(すぎうらけいすけ)さん

ファイナンシャル・プランナー杉浦恵祐(すぎうらけいすけ)さん

イデコの定期預金と一般的な定期預金の違い

まず、「銀行の定期預金」と「iDeCoの定期預金」には、金利など商品の違いがほぼありません

ただし、iDeCoで定期預金を行うケースでは、制度上のメリット・デメリットに注意が必要です。以下、整理していきます。

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メリット

掛金(拠出金)が所得控除の対象に

銀行で定期預金をしても所得税や住民税は安くなりません。
一方、iDeCoで定期預金を行えば、掛金の全額が所得控除の対象に。節税が期待できます。

利子が非課税に

銀行で定期預金をすると、利子に対して所得税と住民税の合計20.315%が源泉徴収されます。
一方、iDeCoで定期預金をすれば、受け取る利子は非課税となります。

ただし、現状の低金利下において、定期預金の利子は微々たるものです。よって利子の非課税メリットの恩恵はほぼないと考えていいでしょう。

デメリット

手数料

銀行で定期預金をしても、預入期間中に手数料を支払う必要はありません。
しかし、iDeCoで定期預金をすると、運用期間中に手数料が発生します。

現状の定期預金の金利では、この手数料を上回る利子を得ることができませんので、資産が目減りしてしまいます。

途中の引き出しが不可

銀行で定期預金をすれば、満期はもちろん満期前でも解約して引き出すことは自由です。
しかし、iDeCoは老後の資産形成を目的としているため、原則として60歳まで引き出しができません。

イデコ定期預金の商品を比較(SBI証券とゆうちょ銀行)

iDeCoはどの金融機関(運営管理機関)で加入するかによって、投資信託はもちろん定期預金も選択できる商品が異なります。

金利に大きな違いはない

とはいえ、固定金利や変動金利など若干の違いはあるものの、現状の低金利下では、どの金融機関の定期預金にも「金利」に大きな差はありません。

以下は実際に「ゆうちょ銀行」「SBI証券」が扱うiDeCoの定期預金の商品とその金利の一例です。

「ゆうちょ銀行」のiDeCo定期預金
(ゆうちょ銀行)確定拠出年金定期貯金1年 0.01%
(三井住友信託銀行)DC固定定期5年 0.01%
(三井住友信託銀行)DC変動定期5年 ※半年ごとに金利変動 0.04%
(三菱UFJ信託銀行)確定拠出年金専用定期預金「ベストテン」 0.01%
「SBI証券」のiDeCo定期預金
(あおぞら銀行)DC定期1年 0.02%
(スルガ銀行)確定拠出年金スーパー定期1年 0.01%

※金利は2018年3月末時点の適用金利。

手数料が異なる

一方、金融機関によってハッキリとした違いがあるのが「手数料」です。

「ゆうちょ銀行」のiDeCo
加入時の事務手数料 2,777円
運用期間中の手数料 月額422円
「SBI証券」のiDeCo
加入時の事務手数料 2,777円
運用期間中の手数料 月額167円(※)

※SBI証券をはじめネット証券会社は、運用期間中の手数料の中の運営管理機関手数料は0円のところが多い。

iDeCoを定期預金のみで運用するのであれば、手数料の安い金融機関を選ぶのが良いでしょう。

低金利だと、受け取る利子が手数料を上回らない

次に「一般的な定期預金」(※1)と「iDeCoで全額を定期預金」(※2)それぞれ1年間運用したケースで比較してみます。

(1)一般的な定期預金のケース

例)
スルガ銀行の店舗で27.6万円を1年定期預金(金利0.01%)に預け入れしたとします。

すると、1年後の利子(税引前)は27円(27.6万円×0.01% ※)。

所得税:約4円(27円×15.315% ※)
住民税:約1円(27円×5% ※)
手取りの利子:22円(27円-4円-1円)

※円未満はすべて切り捨て

(2)イデコで定期預金に全額を積み立てたケース

例)
SBI証券のiDeCoで27.6万円(毎月の掛金2.3万円×12回分)をスルガ1年定期預金(金利0.01%)に年1回の一括で預け入れしたとします。

すると、1年後の利子は27円(27.6万円×0.01%)。

所得税と住民税:0円(非課税)
1年間の手数料:871円(拠出月にかかる手数料167円を1回分+運用のみの月にかかる手数料64円を11回分)
手取りの収益:マイナス844円(27円-871円)

iDeCoに加入した場合、残高が積み上がっていきますので2年目以降の利子は少しずつ増えていきます。

しかし、現状の低金利下においては、よほどの残高にならないかぎり利子が手数料を上回ることはありません。よって、定期預金では利子の非課税メリットの恩恵はないといえるでしょう。

一方、所得控除の節税メリットは大きい

iDeCoで定期預金するメリットは、毎年の掛金がその年の所得控除の対象になることに尽きます。

年収500万円・独身・会社員・企業年金なしでシミュレーション

モデルケースとして、40歳独身の給与収入500万円の会社員Aさんで節税額を計算してみます(iDeCo以外の所得税の所得控除は113万円、住民税の所得控除は108万円の場合)。

Aさんの会社には、企業型確定拠出年金(DC)や確定給付企業年金(DB)などの企業年金制度はなく、iDeCoの拠出額は月額2.3万円(年間27.6万円)、合計税率は約20.21%(所得税率10.21%、住民税率10%)を条件とします。

例)
iDeCo未加入の場合、所得税と住民税の合計額は37万8,800円
iDeCo加入の場合、所得税と住民税の合計額は32万2,900円

よって、Aさんの場合、年間の拠出金27.6万円の約20%相当である5万5,900円(37万8,800円-32万2,900円)が節税額となります。

イデコの定期預金、ココに注意!

ただし、掛金を拠出すると同時に節税メリットが発生するわけではありません。
実際のところ、節税額が戻ってくるタイミングは拠出時よりもかなり遅く、少しずつしか還付(※)されません。

※「還付(かんぷ)」とは、税金を払い過ぎたり、減額や免除などがあった場合に納税者に返金すること。

例えば、次のようなケースが挙げられます。

iDeCoの節税メリットを得るタイミングは遅い

【会社で給料天引きするケース】

所得税の節税額の一部は、掛金を拠出する給与から引かれる所得税が少なくなることで反映されます。
残りは年末調整のタイミングで還付額が増えることで反映されます。

住民税の節税額は、翌年6月分以降の給与から引かれる住民税が少なくなることで反映されます。

【個人口座から引き落とす会社員等】

所得税の節税額は、拠出時の給与計算では考慮されず、「小規模企業共済等掛金払込証明書」を会社に提出することで年末調整時に還付されます。

住民税の節税額は、翌年6月分以降の給与から引かれる住民税が少なくなることで反映されます。

【年末調整がない自営業者等やiDeCo掛金が年末調整の対象とならない会社員】

所得税の節税額は、翌年2月以降の確定申告で納付する所得税が少なくなることで反映されます。

住民税の節税額は、翌年の夏以降に納付する住民税が少なくなることで反映されます。

節税額を意識しないと、老後資金が貯まらない

これらのケースのように、iDeCoにおける節税メリットは、節税額すべてが一度にキャッシュバックされるわけではないことに注意が必要です。
年末調整時の還付額がiDeCo加入前よりも多くなったり、給料から天引きされる税金がiDeCo加入前よりも少なくなることなのです。

具体的にいくら節税できたのかをしっかり意識し、節税できたお金をムダづかいすることがないよう心がけましょう。

iDeCoに加入する最大の目的は、老後の資金づくりです。たしかに所得控除はメリットですが、それだけが目的ではないはずです。

例:定期預金100%でポートフォリオを組むと?

参考までに、40歳でiDeCoに加入し、定期預金100%でポートフォリオを組んだAさんを例に計算してみます。

結論として、節税額を意識することなく使ってしまうと、60歳時点での資産残高が110万円以上少なくなってしまいます。

(1)節税できたお金を使ってしまうと……?

節税できたお金を貯蓄することなく使ってしまうと、20年間のiDeCoでの積み立て額は、550万2,580円({(27.6万円-年間手数料871円)×20年})。

もし、定期預金の金利が20年間ずっと0.01%だった場合、20年間分の利子はわずか5,231円です。

(2)節税したお金を60歳まで貯めると……?

iDeCoで定期預金に年間27.6万円を拠出すると、積み立て額と節税額の合計は、年間33万1,029円(掛金27.6万円-年間手数料871円+節税額5万5,900円)。

20年間の積み立て額は、662万580円(33万1,029円×20年)です。

よって、2つのケースで老後資金に110万円以上の違いが出る結果となります。

(1)のように節税額を使ってしまうと、iDeCoを定期預金のみで運用した場合、手数料分を利子でカバーできず目減りしてしまいます。そのため、60歳時点でそれまでの拠出額を超えるお金が貯まることは期待できません。

それならば、iDeCoではなく財形年金貯蓄や個人年金保険などで積み立てをしたほうが、結果として老後資金は多く貯まります。

一方、節税できたお金をしっかり老後まで貯蓄する(2)の場合、結果として定期預金のみでも、iDeCoで資産を拠出額よりも多く増やすことができるのです。

iDeCoの定期預金で老後資金づくりをする最も重要なポイントは、節税額が多いか少ないかではありません。
節税できたお金を老後資金として貯める心構えがあるか否かです。

iDeCoの所得控除で、実質の運用利回りはどのくらいに?

所得控除の節税メリットを考慮すると、実質の運用利回りはどのくらいになるでしょうか?
以下、4つのモデルケースにて概算してみます。いずれもiDeCoの加入期間は20年、定期預金に年1回の一括で預け入れる条件です。

ideco(イデコ)で全額を定期預金に預けた場合の実質年間利回りの年収別シミュレーション図表

表:編集部作成(※所得税率は、復興特別所得税加算前、実質の運用利回りは複利年金終価率で算出)

【Aさん】会社員(40歳)・給与収入500万円・独身、iDeCo掛金以外の所得控除(所得税113万円、住民税108万円)
【Bさん】公務員(40歳)・給与収入800万円・配偶者あり、iDeCo掛金以外の所得控除(所得税196万円、住民税186万円)
【Cさん】主婦(40歳)・パート収入129万円・配偶者あり、iDeCo掛金以外の所得控除(所得税38万円、住民税33万円)
【Dさん】主婦(40歳)・パート収入100万円・配偶者あり、(所得税、住民税ともに非課税)

Aさん:会社員40歳・給与収入500万円・独身

毎年の節税額5万5,900円が変わらない場合、
実質年間22万100円の拠出(27.6万円-5万5,900円)で、年間27万5,129円を積み立てる(27.6万円-年間手数料871円)ことができます。

よって、会社員(収入500万円・独身)Aさんの実質の運用利回りは、年約2.3%となります(加入時のみにかかる手数料2,777円は考慮せず)。

Bさん:公務員40歳・給与収入800万円・配偶者あり

公務員BさんのiDeCoの拠出限度額は、年間14.4万円。

iDeCo加入前の所得税と住民税の合計額は、80万4,900円。
iDeCo加入後の所得税と住民税の合計額は、76万1,000円。

毎年の節税額は、4万3,900円(80万4,900円-76万1,000円)。

実質年間10万100円の拠出(14.4万円-4万3,900円)で、年間14万3,129円を積み立てる(14.4万円-年間手数料871円)ことができます。

よって、公務員(収入800万円・配偶者あり)Bさんの実質の運用利回りは、年約3.6%となります。

Cさん:主婦40歳・パート収入129万円・配偶者あり

主婦CさんのiDeCoの拠出限度額は、年間27.6万円。
※配偶者の社会保険の被扶養者(第3号被保険者)にあたります。

iDeCo加入前の所得税と住民税の合計額は、4万6,700円。
iDeCo加入後の所得税と住民税の合計額は、6,600円。

毎年の節税額は、4万100円(4万6,700円-6,600円)。

実質年間23.6万円の拠出(27.6万円-4万円)で、年間27万5,129円を積み立てる(27.6万円-年間手数料871円)ことができます。

よって、主婦(収入129万円・配偶者あり)Cさんの実質の運用利回りは、年約1.6%となります。

Dさん:主婦40歳・パート収入100万円・配偶者あり

主婦CさんのiDeCoの拠出限度額は、年間27.6万円。
※配偶者の社会保険の被扶養者(第3号被保険者)にあたります。

iDeCo加入前の所得税と住民税の合計額は、0円。
iDeCo加入後の所得税と住民税の合計額は、0円。

※課税所得は、0円(100万円-給与所得控除65万円-所得控除38万円)。
※住民税は、所得が35万円以下のため、所得割も均等割りも0円。

所得税も住民税も非課税なので、毎年の節税額はナシ。

しかし、節税メリットがなくても、iDeCoに加入する限り手数料は発生し続けます。上述のように手数料を金利でカバーすることは難しいので、実質の運用利回りはマイナスとなります。

知っておきたい制度

iDeCoで定期預金を選ぶのであれば、こんな知識も頭に入れてみてはいかがでしょうか。

元本確保型でもスイッチングには注意

iDeCoは原則として60歳まで引き出すことが認められていません。しかし、他の金融商品への預け替え(スイッチング)が可能です。

ただし、「定期預金」の満期前のスイッチングは、預け入れ時の金利よりも下回る「中途解約金利率」が適用されてしまいます。

また、利率保証型の「保険商品」も期限前のスイッチングは、「解約控除」というペナルティが発生する場合があります。その場合は、元本割れしてしまうケースに注意しましょう。

ペイオフ制度はあるが、一般的な定期預金とは別の口座で

もし、金融機関が倒産した場合、iDeCoに積み立てた定期預金もペイオフ(預金保険制度)の対象となります。
預金保険機構により、1人あたり1金融機関1,000万円までの元本とその利子が保護されます。

ただし、対象はiDeCoでの預金も合算して1,000万円です。もし、A銀行にすでに1,000万円以上の預金があり、万が一のことを考えるなら、iDeCoの定期預金はA銀行以外に預けたほうがよいかもしれません。

イデコの年払い化で、手数料を節約できる!

2017年までは毎月積み立てる(掛金を拠出)必要がありました。しかし、2018年の制度変更によって、拠出回数が最低年1回以上となりました。

毎月iDeCoで支払う手数料のうち103円(国民年金金連合会へ支払う手数料)は、積み立てをする月のみ発生します。

つまり、毎月積み立てるのではなく、積み立て回数を年1回にすることで、手数料を1,133円(103円×11回)下げることができます。

【参考】イデコの掛け金を年単位で拠出したら、どうなる? 月払いと比較したメリットとデメリット

株式や投信信託では、「ドルコスト平均法」と呼ばれる定期的に毎月積み立てる投資法が有名です。
しかし、定期預金の場合、価格変動のリスクがないので、分割購入する必要もメリットもありません。iDeCoを定期預金のみで運用するなら、年1回の積み立てがおススメです。

まとめ:イデコ定期預金で、トクする人・ソンする人

iDeCoの定期預金でトクするのは、課税所得が多く節税メリットが大きい人。さらに、節税したお金を使わずに老後資金として貯めることができる人です。

具体的に、課税所得が増えて、所得税率が高くなれば高くなるほど、所得控除の節税メリットを考慮した実質の運用利回りも高くなるのです。

一方、おススメできないのは、払うべき所得税や住民税がなく、節税メリットが小さい人です。

所得税を払っていない専業主婦(主夫)の人は、そもそも節税メリットがありません。そのため、定期預金のみで運用するつもりなら、iDeCoに加入しないほうが良いでしょう。

(文:ファイナンシャル・プランナー杉浦恵祐さん、編集・構成:SENECT編集部)

この記事の著者

杉浦恵祐(FP)

杉浦恵祐(ファイナンシャルプランナー)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)、1級DCプランナーなどの資格を保有。株式会社OSP代表取締役、株式会社相続相談センター取締役。名古屋大学経済学部卒業後、大手ベンチャーキャピタル、税理士事務所系資産コンサルティング会社を経て、2000年独立。

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