年金手帳

制度の解説

「年金はいくら貰えるの?」できるかぎり正確に知る方法

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気になる公的年金、いくらもらえるか知りたい。具体的な計算方法をファイナンシャルプランナー・長尾真一さんが説明します。

ファイナンシャルプランナー・長尾真一さん

ファイナンシャルプランナー・長尾真一さん

受給額は人によって違う

老後に受給する公的年金には「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」があります。加入している年金制度、保険料の納付期間や金額などによって、人それぞれ受給額が変わります。

老齢基礎年金

「老齢基礎年金」の受給資格は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」の保険料を10年以上納付することで、65歳から終身にわたって受け取ることができます。

国民年金の保険料は一律で平成30年度は1万6,900円。ただ、実際のところ、この金額に物価・賃金の変動を反映した改定率を加味するので1万6,340円となっています。

国民年金の満額支給についても、物価や賃金の変動によって毎年変動します。平成30年度の年金額(満額)は77万9,300円です。満額を受給するには、保険料を40年間納付する必要があります。

こうして計算する。

具体的な計算方法は次のとおりです。未納期間や経済的な理由により保険料の納付免除を受けた場合、その期間に応じて受給額が減額されます。

{「老齢基礎年金の満額(77万9,300円)」×「保険料を納めた月数」+「免除期間の反映月数(※)」}/480ヵ月(40年

※平成21年4月以降
全額の免除期間 2分の1が反映
4分の3の免除期間 8分の5が反映
2分の1の免除期間 4分の3が反映
4分の1の免除期間 8分の7が反映
※平成21年3月以前
全額の免除期間 3分の1が反映
4分の3の免除期間 2分の1が反映
2分の1の免除期間 3分の2が反映
4分の1の免除期間 6分の5が反映

計算例)
たとえば、35年間(420ヵ月)にわたって保険料を納付し、平成21年4月以降に5年間(60ヵ月)全額免除を受けていたとします。

すると、全額免除期間は1/2にあたる30ヵ月分が反映され、納付月数は420ヵ月+30ヵ月=450ヵ月となります。

つまり、この例の場合、77万9,300円×450ヵ月/480ヵ月=73万600円が年金額(100円未満は四捨五入)となります。

仮にこの5年間が免除ではなく未納だったとすると、年金額の計算には反映されないので77万9,300円×420ヵ月/480ヵ月=68万1,900円となります。

また「保険料の免除」ではなく、「納付猶予」や20歳以上の学生が在学中の納付を猶予される「学生納付特例制度」もありますが、この期間は受給資格期間には反映されるものの、年金額には反映されないので注意が必要です。

納付猶予や学生納付特例制度を利用した人が、老齢基礎年金を満額受給したい場合、10年以内に追納(後払い)する必要があります。

また、60歳までに40年間の納付期間がなく満額受給できない人で厚生年金に加入していない場合、60歳以降も65歳までは「任意加入」によって保険料を納付し、年金額を増やすことができます。

老齢厚生年金

「老齢厚生年金」は、会社員や公務員など厚生年金に加入する「第2号被保険者」が老齢基礎年金に上乗せして受給する年金です。

老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間(10年)を満たしていることが受給要件です。老齢基礎年金の資格期間さえ満たしていれば、厚生年金は1ヵ月以上の加入期間があれば受給することができます。

老齢厚生年金の受給額は老齢基礎年金とは違い、「加入期間」だけではなく加入期間中の「月収」や「ボーナス」の金額によっても変わります。収入が高い人ほど保険料を多く納付し、年金も多く受給する仕組みです。

こうして計算する。

計算式は次のとおりです(※昭和21年4月2日以降生まれの場合)。

平均標準報酬月額×(7.125/1,000)×平成15年3月までの加入月数}+平均標準報酬額 ×(5.481/1,000)× 平成15年4月以後の加入月数

平成15年4月前後で、適用される計算方法を分ける必要があります。

大きな違いは平成15年3月まではボーナスを含まない「平均標準報酬月額」で計算していたのに対し、平成15年4月以後はボーナスを含む「平均標準報酬額」で計算する点です。

これは平成15年4月から「総報酬制」が導入され、賞与に対しても毎月の給与と同じ保険料率を掛けて保険料を納付することになったためです。受給額の計算も平成15年3月までの加入期間は賞与を含まない「平均標準報酬月額」で計算するのに対し、平成15年4月以後は標準報酬月額と標準賞与額を足した平均である「平均標準報酬額」で計算することになりました。

ただし、総報酬制の導入にあたっては急激な負担増にならないように保険料率が引き下げられました。したがって受給額の計算においても乗率を7.125/1,000から5.481/1,000に引き下げ、総報酬制の導入前後で急激な差が出ないように調整されています。

「平均標準報酬月額」とは「標準報酬月額」の総額を加入期間の月数で割ったもの。厚生年金の「標準報酬月額」の区分は、1等級(8万8,000円)~31等級(62万円)まであります。月収31万円以上~33万円未満であれば標準報酬月額は32万円(20等級)、33万円以上~35万円未満であれば34万円(21等級)。

実際のところ、毎年4・5・6月の平均給与をもとに1年間の標準報酬月額が決まりますが、この給与には各種手当や残業代も含まれます。通常、残業代は翌月の給与に加算して支給されますので、3月~5月に残業が増えれば4・5・6月の平均給与が上がり、厚生年金保険料が上がる可能性があります。

平成15年4月以後の「平均標準報酬額」は、「標準報酬月額」と税引き前賞与額から千円未満を切り捨てた「標準賞与額」(1ヵ月あたり150万円が上限)の総額を加入期間の月数で割ったものです。

計算例)
たとえば、平成15年3月以前の加入期間が10年で平均標準報酬月額が30万円、平成15年4月以降の加入期間が30年間で平均標準報酬額が50万円とした場合、

30万円×7.125/1,000×120ヵ月+50万円×5.481/1,000×360ヵ月=124万3,080円が、老齢基礎年金に上乗せして受給する老齢厚生年金の額となります。

なお、老齢厚生年金も男性は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降に生まれた人は65歳から受給しますが、それ以前に生まれた人は生年月日に応じて60歳~64歳の間に「特別支給の老齢厚生年金」が支給されます。

「ねんきん定期便」の詳しい見方

年金手帳のイラスト

出典:PIXTA

毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」には次のような情報が記載されています。


  1. これまでの年金加入期間
  2. 加入実績に応じた年金額(50歳未満)
  3. 老齢年金の見込額(50歳以上)
  4. 最近の月別状況

これまでの年金加入期間

「これまでの年金加入期間」には国民年金、厚生年金、船員保険の加入月数および合算対象期間等の月数。そして、その合計である「受給資格期間」が記載されています。老齢基礎年金を受給するためには10年(120ヵ月)以上の受給資格期間が必要なのでチェックしておきましょう。

加入実績に応じた年金額(50歳未満)

50歳未満の場合、ねんきん定期便に記載された年金額を目にして「これだけしかもらえないの?」と驚くかもしれませんが、これはあくまで「加入実績に応じた年金額」なので、満額ではありません。今後も加入を続けることで保険料を納付していけば金額は増えていきます。

老齢年金の見込額(50歳以上)

50歳以上の人は「老齢年金の見込額」を確認。老後に受給する金額をイメージしやすいのですが、この見込額は現時点の加入条件で60歳まで継続加入することを前提にして計算されています。
今後、未納期間が生じたり、会社員で給与が増減することで受給額は変わります。また、60歳以降や定年後も会社員として働き続ければ老齢厚生年金は、増え続けます。

なお、生計を維持する65歳未満の配偶者がいるケースなどに加算される「加給年金」や加給年金の打ち切り後に配偶者自身の老齢基礎年金に加算される「振替加算」などは、ねんきん定期便には記載されません。

最近の月別状況

「最近の月別状況」をみると、直近の被保険者区分(国民年金・厚生年金)や保険料の納付状況を確認することができます。自分は会社員だから厚生年金に加入していると思っていても、勤務先が厚生年金の加入を怠っている場合もあるので注意が必要です。

また、転職や結婚により第3号被保険者に変更になった場合などは、保険料の納付もれや記録の誤りが起こりやすいので注意しましょう。厚生年金加入者は、直近の標準報酬月額や標準賞与額もこの欄でチェックできます。

「ハガキ」と「封書」の違い

ねんきん定期便は35歳・45歳・59歳の節目の年には、ハガキではなく封書で届きます。ハガキとの大きな違いは、直近だけではなく過去の加入期間すべての被保険者区分や保険料の納付状況が記載されていることです。

封書の中には年金加入記録の確認方法などが記載されたパンフレットや、記録に「もれ」や「誤り」があった場合に提出する「年金加入記録回答票」も同封されているのでしっかりと確認しましょう。

とくに、複数の年金手帳を持っている人、短期間での転職経験がある人、読み間違えやすい名前の人や退職後に結婚して姓が変わった人などは、過去の年金記録が正しく統合されていない可能性がありますので注意しましょう。

「ねんきんネット」でもOK

ねんきんネット」を活用すれば、ねんきん定期便を待たなくても、いつでも自分の記録をインターネット上で確認することができます。

基礎年金番号とねんきん定期便に記載されたアクセスキーで登録できますが、アクセスキーの有効期限は3ヵ月なのでねんきん定期便が届いたら早めに登録しておきましょう(期限が切れても、日本年金機構のホームページから所定の申込手続きをすれば利用可能です)。

いろいろ便利

ねんきんネットでは、いつでも最新の年金記録を確認することができ、過去の加入履歴もすべてみることができます。
記録上で未加入となっている場合は、分かりやすく赤字で「未加」と表示されるなど、もれや誤りを発見しやすいメリットがあります。

そのほかにも、ライフプランに合わせた年金見込額の試算や各種届出書の作成ができるなど、便利な機能がそろっています(機能は限定されますがスマートフォンにも対応)。

公的年金は老後の生活を支える一番の柱ですが、それだけに頼ることができないのもまた事実です。
だからこそ、公的年金の仕組みを知り、ねんきん定期便やねんきんネットで自分の年金の状況を把握しながら生活設計を考えていくことが大切です。

この記事の著者

長尾真一(FP)

保有資格:AFP、企業年金管理士(確定拠出年金)、DCアドバイザー、トータル・ライフ・コンサルタント、損害保険プランナー。保険や確定拠出年金の専門家ファイナンシャルプランナーとして、個人相談や中小企業・大企業などに年間80回以上のセミナー講師を務めている。講演ののべ聴講者数は1万人を超える。

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