コラム

お参りで大切なことは? 【神さまマップ】で話題のサイト運営者に聞く

取材協力:

 

孤独死、家族関係の希薄化、単身世帯の増加……。日本人の「地域」との繋がりが問われるなか、神社やお寺を通じてコミュニティ作りをしているサービスがあります。『ホトカミ』を運営する株式会社DO THE SAMURAI代表の吉田亮さんにお話をうかがいました。

地域との繋がりが薄れる現代日本

おすそ分けや、地域内のボランティア活動など、近隣住民同士の付き合いが密接だったのも今は昔。 とくに都市部では、「隣に住んでいる人の名前も知らない……」という人も多いのではないでしょうか。

アパートの廊下

写真:gimyzr / photoAC

今はSNS(インターネット上の交流サービス)の普及などで、「地域との繋がりを持たなくても大丈夫」、と感じる人もいる一方で、社会的孤立感が増し、不安な日々を過ごす人もいます。

とくに都市部などの孤立化が進む地域では、周囲に気づかれないまま亡くなる人も増加しているなど、地域との関わりの希薄化は、深刻な事態を招くことも。

国立社会保障・人口問題研究所の調査では、2040年に単身世帯の人口が4割を占めると言われているように、これからは近隣住民で互いに支え合う必要性がより増していくのではないでしょうか。

そのようななか、地域の繋がりを、神社やお寺という古来からある場所を通じて復活させようとしているサービスがあります。神社とお寺の投稿サイト、『ホトカミ』です。

『ホトカミ』で築く新たなコミュニティの形

『ホトカミ』には、日本全国にある14万5000社以上の神社仏閣の情報が掲載されています。 運営者の吉田さんは、なぜ神社やお寺に注目したのでしょうか。

大山阿夫利神社

写真:大山阿夫利神社(神奈川県伊勢原市)にて編集部撮影

地域の「ハブ」としての神社とお寺

吉田さんは、神社やお寺のかつての「あり方」について説明します。

明治時代以前は、現代よりも神社やお寺がコミュニティのハブ(中心)としての役割を果たしていました。

事実、江戸時代には寺子屋(てらこや)と呼ばれる教育施設が地域における知的活動や住民交流の中心になっていました。 また、さかのぼること7世紀には寺院を中心とした医療や社会福祉活動が行われており、寺院は地域住民に多様な役割を果たしていました。
参考:朴景善、王文潔、孫雪瑩、稲葉圭信「地域における寺院の社会貢献 : 熊本県宇城市豊野町の光照寺の防災・復興活動を事例に」(『宗教と社会貢献』2018年4月、P103)。

鹿島神社

写真:とちぎ / photoAC

神社も同様に、土地にゆかりのある神様、氏神(うじがみ)と氏神を信仰する氏子(うじこ)という関係で、神社を中心としたコミュニティが村落における文化の担い手としても活躍していた時代や地域がありました。たとえば、災害救助や道路整備などを村の若い氏子たちが行っていたのです。
参考:伊藤聡、遠藤潤、松尾恒一、森瑞枝『日本史小百科 神道』(東京堂出版、2003年、P48)。

時代によっても神社やお寺と地域の関係性は変化していますが、かつてその関わりは密接でした。

今は時代の変化に対応できず、神社やお寺が身近な存在ではない方が増えているかもしれません。

昔あったように、地域の繋がりが生まれるようにしていきたいと話す吉田さん。

たとえば、お寺と聞くと“お葬式”のイメージが強い方もいるかもしれません。

しかし、そもそも仏教は亡くなった人だけのものではなく、生きている人のためのものでもあります

最近では座禅や写経に興味を待つ方なども増えていますし、お葬式以外の「生きている人のためのお寺」としても、親しむ方が増えたらいいなと思っています。

「神社とお寺に人を呼びたい」

もともと日本の文化や歴史が好きで、松陰神社(東京都世田谷区)の歴史資料館で毎週塾を開いていたという吉田さん。それから神社やお寺でツアーを依頼されるようになり、神社やお寺の方たちから悩みを相談されたことが、今のサービスが生まれるきっかけだったと明かします。

神社ツアーやお寺でのイベントをやっていくうちに、神社やお寺の方との知り合いが増えていきました。

そのなかで、お寺の方や神社の方から「どうやってお参りに来てもらったらいいのかわからない」などの相談を受けるようになったのです。

また一方で、ツアーやイベントをやるうちに、神社やお寺の情報を求めている人たちがいると気がつきました。

「お参りしてほしい」と思っている人たちと、「お参りしたい」と思う人をウェブ上でつなげることができたら、より神社やお寺に人が集まると考えました。

吉田さん提供するサービス、「ホトカミ」では何ができるのでしょうか。

「ホトカミ」でできること

ホトカミでは、日本中にある神社とお寺を探すことが可能。日本全国から「お参りの記録」が集まっています。

投稿方法は簡単で、お参りした神社やお寺の「感想」を写真とともにつづるだけ。ユーザーはお参りをした思い出をサイトに残すことができます。

神社の写真撮影

写真:恵比寿神社(東京都渋谷区)にて編集部撮影

ホトカミの投稿サイト

写真:編集部撮影

また、いいなと思った投稿には「すてき」ボタンを押すことで、ほかのユーザーと想いを共有することができます。

お参りをして「感じたこと」を投稿する場所

吉田さんに、お参りの記録を投稿するにあたってのアドバイスをうかがいました。

「お寺などの歴史について書かなきゃいけないの?」と思う人もいるかもしれません

しかし大事なことは、「お参りをして、どう感じたか」です。多くの人の神社お寺への想いが沢山が集まると、それらが一つの価値になります。

全国の「御朱印」も検索可能

また、2018年の春には「御朱印帳(ごしゅいんちょう)マップ」も追加。ユーザーが投稿した御朱印を検索することができます。 御朱印とは、神社やお寺から貰える“お参り証”で、老若男女問わず「御朱印集め」が近年盛り上がりを見せています。

御朱印帳の写真:編集部撮影

機能の追加はユーザーの声を反映させたと語る吉田さん。 今後もユーザーの意見を参考に、「地図からさまざまな情報を検索できるようにしていきたい」と展望を明かします。

神さまマップと寺院宗派マップ

インタビュー後の2018年7月には、日本全国のご祭神や、寺院宗派の分布などがヒートマップで地図上に表示される新機能が追加されました。

お参りの記録サイトならではの楽しみ方も

また、『ホトカミ』にはお寺好き、神社好きには嬉しい機能もあります。 「ご祭神・ご本尊検索」という機能では、神様が祀(まつ)られている神社などを探すことが可能。

ご祭神・ご本尊

図:編集部作成

たとえば、ご祭神・ご本尊検索で「徳川家康」と入力すると、日光東照宮(栃木県日光市)など、全国の徳川家康を祀る神社が表示されます。

ホトカミのご祭神・ご本尊検索結果

出典:『ホトカミ』のご祭神・ご本尊検索結果

ホトカミは、神社やお寺の知識がない人でも楽しめますが、神社仏閣ファンも満足できるサービスが提供されているのも、一つの大きな魅力です。

『ホトカミ』ではイベントも開催

『ホトカミ』では、オンラインでの繋がりだけでなく、お寺や神社のツアーなども実施。 「神社・お寺と人を結びつけたい」との思い通り、リアルな繋がりも大事にしています。 最近では、NHK大河ドラマにちなんだツアーや、御朱印集めのイベントなどを行ったそう。

ホトカミのオフ会の様子

提供写真(株式会社DO THE SAMURAI)

神社仏閣ツアーだけに、参加者の年齢層は高めと思いきや、20代から40代と幅広いそうです。古くから続く日本の文化なだけあって、年齢も職種も異なる人たちと交流できるのは神社やお寺の魅力かもしれません。

お参りで大切なことは? 

ただ、初心者にはなかなか難しいと感じてしまうかもしれないお参りの仕方。 しかし、吉田さんは、「大切なことは、ありがたいものをありがたいと思う気持ち」と説明します。

日本人には、何か「ありがたい」とされているものを、ありがたく思う気持ちがあると思うのです。
その、おそれ多くも感謝する気持ちが神社やお寺では大事なのです。

神社であれば、「二礼・二拍手・一礼」などの基本作法はあり、これらができるのが良いとされています。しかし、作法を間違えたからといっても決して悪いことではなく、「お参りするときの気持ちを大切にしてほしい」と吉田さんは語ります。

神社でのお辞儀

写真:恵比寿神社(東京都渋谷区)にて編集部撮影

もうすぐ定年だし……という方も、神社やお寺に行くことで、新しい繋がりが生まれるかもしれません。

定年を迎え、仕事の繋がりもなくなり、交流関係が狭まってしまうのは当然。しかし、今まで意識しなかった地元の神社や、お寺に足を運ぶことで、新たな発見や出会いが生まれるかもしれません。それらが、地元をより好きになるきっかけになったり、地域との繋がりを密に感じる機会になるのではないでしょうか。

この記事の取材協力

DO THE SAMURAI

2016年設立。「100年後の人々にも感謝される仕事」を事業理念に掲げる。日本最大規模を誇る神社お寺のお参りの記録投稿サイト『ホトカミ』を運営。Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)の「新しいイノベーション! 日本の担い手99選」に選出されるなど、各メディアへの掲載実績も多数。

DO THE SAMURAIの関連記事を読む

みんなに記事を教える