ファイナンシャルプランナー・久保逸郎(くぼ・いつろう)さん

老後のお金

退職金の「預け先」 定期預金、国債…少しでも有利なのは?

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退職金を受け取ったものの、どう管理すべき……? 老後を支える大事な退職金の預け先について、老後のお金の不安解消アドバイザー・久保逸郎さん(ファイナンシャルプランナー)が整理します。

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ファイナンシャルプランナー・久保逸郎(くぼ・いつろう)さん

日本銀行によるマイナス金利政策の影響で、超低金利の状況が続いています。金融緩和の効果で好調な株式市場についても、2018年2月以降は不安定な状況となり、世界経済では、これ以上は上昇しないであろうピークアウトの雰囲気。

その一方、原油価格の上昇によってガソリン価格が高騰するなど、インフレ率(消費者物価指数)は世界的にも上昇の流れです。

これらのように、超低金利、株式など資産価格の下落リスクが高まりつつある中で物価は上昇していく……といった市場環境であるため、大切なお金の資産価値を守ることが大変難しくなっています。

いざ、退職金を受け取ってみて、その預け先に頭を悩ませる人が多いのも当然かと思います。このような厳しい市場環境を踏まえ、退職金について寄せられることが多い悩み・質問からまずお答えします。

「インターネット銀行の定期預金」は金利が高い

市中に支店や店舗がある銀行と比較し、インターネット上で営業を行う銀行は運営コストが少なく済むため、定期預金の金利は高めに設定されています。

たとえば、オリックス銀行に300万円を定期預金で預けると、0.2%の金利が適用されます(2018年8月7日現在、「スーパー定期300」の金利)。

定期預金に絞れば、インターネット銀行を活用するのは良い選択肢といえるでしょう。

注意すべきこと

しかし、いくらインターネット銀行の金利が高いといっても、冒頭のマイナス金利政策の関係で、金利水準は1%以下。足元で起きているインフレ(物価の上昇)を考えれば、実質的な金利はマイナスといえます。

仮に、預金金利をゼロと考えれば、物価が上がる分だけ金融資産の実質的な価値が下がってしまうことになります。このような現状を踏まえて、退職金の預け先を決めることは大変重要です。

よって、退職金の預け先としてインターネット銀行が適しているかというと、疑問が残るのも事実です。

「退職金専用定期預金」は、よく考えて

退職金の受け取り時に、退職者限定で活用できるのが「退職金専用定期預金」です。

条件はそれぞれの金融機関で異なるものの、通常は退職金の受け取りから3ヵ月~1年以内に預け入れることが条件になっています。

預け入れ期間は、1~3ヵ月間から1年程度の短期間の金融機関がほとんど。年利で金利2%超えの設定をしている金融機関もあり、たしかに金利面での魅力はあります。

金利が高いワケ

ただし、わざわざ金融機関が損をしてしまうような高い金利を設定しているのには「裏の狙い」があります。

まず、「退職金専用定期預金」の高い金利で数百万・数千万円の退職金を口座に入金してもらってから、少しずつお客さまとの関係性を深めていくこと。そして、最終的には多くの手数料が稼げる生命保険や投資信託を提案・販売するという仕組み。

金融機関にとっては、「退職金専用定期預金」はあくまでも顧客との入り口・きっかけづくりの商品にすぎないので、短期間の優遇しか受けることができません。

そのため、優遇期間を終えた後に自分自身で「次の預け先」を検討できる金融リテラシーの高い人が利用すると良いかと思います。

「退職金が振り込まれた銀行」から営業を受けたら、何を確認すべき?

退職金の預け先を検討するに際して、特に考えるべきなのが、金融商品はあくまでもライフプランを実現するための手段に過ぎないこと。

一般的な傾向として、営業を行う銀行側は金融商品の販売手数料などを得ることを目的にしているものですが、本当にその金融商品が人生に必要かどうかはわかりません。

また、消費者側の知識不足という背景もあって、現実的には営業を行う側がより高い収益が得られる、つまり手数料の高い商品を勧めていることが多いのが現実です。金融商品に対する知識を増やすと同時に、それらの商品選びを行う前に自身の資金計画を確認すべきでしょう。

自身のライフプラン実現のために必要な手段として、具体的な商品を検討してもらいたいものです。ライフプランに合わせて退職金の預け先を見つけることで失敗のリスクは減り、自身のライフプラン実現のためにその商品を保有しているという意識も強くなるでしょう。

「個人向け国債」低金利時代は固定or変動?

銀行の定期預金と比較されることが多いのが「個人向け国債」。基本的に元本割れすることなく、最低0.05%の金利が保証されます。

個人向け国債には、満期まで利率が変わらない「固定3年」「固定5年」、半年ごとに利率が変動する「変動10年」3つの種類があります。

退職金の預け先に悩んでいる場合、当面はこの個人向け国債(変動10年)に預けておくのも手段のひとつ。

直近の表面利率(債券の額面に対して、毎年受け取る利子の割合)は、固定3・5年と変動10年のいずれも0.05%で最低保証のライン(2018年5月18日現在)ですので、今はあえて固定金利を選ぶ必要はないのではないでしょうか。

低金利の時代ですので、金利が上昇した場合に「変動10年」であれば利回りのプラス変動が期待できます。

ただ、個人向け国債も、前述のインフレ率以下の低い金利水準であるため、あくまでも一時的な預け先として考えておいたほうがいいことも付け加えておきます。

資金を「4つ」に分けて、考える

それでは、具体的にどのように行動すべきでしょうか。

繰り返しになりますが、退職金を受け取るタイミングでしっかりとライフプランを検討すること。その計画に合わせて資金を分けることから始めましょう。

たとえば、次の4つに分けてみてはいかがでしょうか。


  1. 流動性資金 (いつでも引き出せるお金)
  2. 使用予定資金(使いみちが決まっているお金)
  3. 安全性資金(安定的に運用するお金)
  4. 積極性資金(積極的に運用するお金)

流動性資金

日常生活のためや急な出費に備えるためのお金です。

生活費の半年分がこの流動性資金の目安です。いつでも引き出せるように、1千万円までと利息が預金保護の対象である普通預金などに預けてください。

使用予定資金

自動車の購入や住宅のリフォーム、子どもの結婚資金など、近い将来に使うことが決まっているお金は、使用予定資金として確保しておきましょう。

安全性資金

安全性を第一に考えて運用するお金です。

過去の金利が高い時期にはスーパー定期預金や高格付けの社債などである程度の収益を得ることが可能でした。
しかし、現在のような超低金利の環境では、リスクをとらずに運用しても収益性は期待できません。

近年は、複数の商品を組み合わせて資産配分し、リスクをコントロールしながら運用を目指す「アセットアロケーション・ファンド」を活用する人が増えています。

投資商品のリスク・リターン関係の参考図

編集部スタッフ作成

積極性資金

リスクをとりながら、積極的にリターンを求めて運用を行うためのお金です。

価格変動リスクや為替リスクなどを許容しつつ、国内外の株式やREITなどの資産に投資をして収益性を求めます。

しかし、高い収益性を求めることは、それだけ大きなリスクを抱えること。そのため、一定の投資知識や経験が必要になってきます。

その他、おススメの方法

グローバルの観点でお金の価値を守る

超低金利の環境といえども、今はまだ預金金利はマイナスではありません。そのため、預貯金にお金を預ければ、額面が減ることはありません。日本人が日頃使う通貨は円ですよね。

その円もグローバルの視点で見れば為替に影響されています。仮に、現在が1米ドル110円とすると、円高に動いて1米ドル100円になれば、その円の価値は世界的に見て10%上昇したことになります。

それに対して、円安の方向に動いて、1米ドル120円となった際は、その価値が8%程度下落したことになります。

また、日本の食料自給率は、カロリーベースで約40%。6割の食料は輸入に頼っているのが現状です。加えて、エネルギーや資源については、ほぼすべてを輸入に頼っています。

資源が少なく、輸入に頼らなければいけない日本において、為替が円安に振れてしまったとき、国外の食料やエネルギー・資源の購入に多くのお金を払わないといけません。

これは一例ですが、このように世界経済は結びついています。大切なお金の価値を守るためにもグローバルの観点に意識を配ることは大切です。

NISAなど税制優遇のある制度を活用

「NISA(少額投資非課税制度)」「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の対象者が拡大したことに加えて、2018年から「つみたてNISA」も始まりました。いずれも、運用益に通常約20%かかる税金が非課税となるおトクな制度です。

iDeCoやつみたてNISAは、老後に向けた資産形成を目的に活用されていますが、NISAはすでに手元にまとまった資金がある方に向いているといえます。

たとえば、1人当たり最大600万円(年間120万の投資枠×5年間)、夫婦合わせれば最大1,200万円の非課税枠があるので、税金面でのメリットは大きいです。

せっかくの税制優遇ですから、退職金を預ける先として上手に活用したいものです。

(文:ファイナンシャルプランナー久保逸郎さん、構成・編集:セネクト編集部)

この記事の著者

久保逸郎(FP)

保有資格:ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、シニア・ライフ・コンサルタント。「90歳まで安心のライフプラン」を掲げた“老後のお金の不安解消アドバイザー”。FPオフィス クライアントサイド代表を務める。マネー雑誌などでもコラムの執筆を行う。

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