制度の解説

確定拠出年金(DC)と確定給付年金(DB)の違い【比較表】

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どっちがどっち…? 同じ企業年金である「確定給付年金(DB)」と「確定拠出年金(企業型DC)」の違い、メリット・デメリットについて、9つの観点から比較。社会保険労務士・菅田芳恵さんが、わかりやすく解説します。

【比較表】確定拠出年金と確定給付年金の違い

確定給付年金と確定拠出年金の違いをまとめた比較表

グラフ:編集部スタッフ作成(2018年7月)

上の表は、確定給付年金(DB)と確定拠出年金(企業型DC)の違いを大きく比較したもの。

それぞれの項目の注意すべき点について、社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー菅田芳恵(すがた・よしえ)さんより詳しく説明いただきます。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー菅田芳恵(すがたよしえ)さん

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー菅田芳恵さん

【制度・仕組み】の違い

確定給付年金(DB)

確定給付年金(DB)は、年金としてもらえる将来の給付額を先に決定し、必要となる掛金を企業(会社)が支払い、運用・管理します。

そのため、社員が将来受け取る金額は保証されています。年金資産は、企業が金融機関等に委託して運用します。運用失敗や不足時の責任は企業が負い、補てんします。

つまり、社員は一切の責任を負わずに、あらかじめ決められた額の年金を受け取ることができるのです。

2種類「規約型」「基金型」に分かれる

また、確定給付年金には、規約型基金型があります。
「規約型」は、企業と社員が規約(ルール)を定め、金融機関が管理運用を行います。「基金型」は、企業年金基金が管理運用を行います。

企業年金としては、「厚生年金基金」もありますが、これは国の厚生年金の一部と企業年金が合体した制度です。

確定拠出年金(DC)

確定拠出年金(DC)は、毎月の掛金(拠出)を決めておき、将来の給付額は掛金と運用の実績によって変化します。運用は、社員個人が行います。

そのため、社員が将来受け取る給付額は確定していません
金融機関等によって、社員ごとの年金資産が管理され、提示された金融商品の中から自分で決定します。責任は社員自身が負うことになります。

つまり、運用の実績次第で受け取る金額は変わり、積み立てた掛金を下回る可能性もあります。

2種類「企業型」「個人型」に分かれる

退職金制度として企業(会社)が導入し、掛金を支払う「企業型確定拠出年金(DC)」と、個人が自ら加入して掛金を負担する「個人型確定拠出年金(イデコ)」があります。

【加入者数】の状況

企業年金連合会が、2018年7月5日に発表した「企業年金の現況」によると、確定給付年金の加入者数は901万人、確定拠出年金(企業型)の加入者数は678万5千人、イデコこと確定拠出年金(個人型)の加入者数は91万4,879人となっています。

確定給付年金と確定拠出年金(企業型)と確定拠出年金(個人型)の加入者数を示したグラフ

企業年金の種類別加入者数
グラフ:編集部スタッフ作成

確定給付年金は、昨今の低金利で積み立て不足に陥った状態で、各企業はその補てんをするために経営が圧迫されています。

そこで、確定給付年金のすべて、または一部を確定拠出年金に移行(退職金制度として導入)する企業は年々増えています
また、制度を継続している企業では、社員と話し合うことで制度自体を廃止したり、給付額を減額したりするケースもみられます。

【受け取り方】

積み立てた企業年金の受取り方は、企業によってさまざま。
大きくわけて一時金」もしくは「年金として受け取る方法。

また、一部を一時金で受け取り、残りを年金として取り崩す併用型もあります。

さらに確定給付年金は企業によって、5年・10年といった一定の期間で支払われる「有期年金」や死ぬまで給付される「終身年金」など規約でいくつかのタイプが用意されている場合もあります。

確定拠出年金は、積み立てた年金資産がなくなれば、そこで受給が終了となります。

【税金の優遇制度】

企業年金は、年金としてもらう場合は国民年金や厚生年金と同様に公的年金等控除」の対象となり、税金が軽減されます。

退職所得控除の税制優遇については、会社からの退職金に確定給付年金(DB)や確定拠出年金(DC)の一時金を合計して、非課税額が決まります。非課税枠の計算式は以下のとおりです。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
20年超 70万円×(勤続年数-20年)+800万円

出典:国税庁ホームページより編集部作成

たとえば、退職金1,000万円かつ、DBまたはDCの一時金が1,000万円の社員が勤続年数40年で退職する、合計2,000万円のケースで考えると、

70万円×(40年-20年)+800万円=2,200万円

事例でいえば、2,200万円までは税金が発生しません。もし、合計2,200万円以上を受けとる場合、非課税額を超えた額の2分の1に対し、所定の税金が発生します。

また、確定拠出年金の掛金に対しては、会社が負担する掛金に社員個人の給与を上乗せするマッチング拠出などをしている場合、社員個人による拠出分に対して所得税および住民税が非課税となります。

【変更】途中で商品を変更できるの?

確定給付年金(DB)

確定給付年金では、企業が一括で運用しますので、基本的に社員が商品選択にかかわることはありません。
委託された金融機関が、あらかじめ決めた予定利率を目標に運用管理していきます。

確定拠出年金(DC)

確定拠出年金では、社員個人が運用商品の選択を行い、運営管理している金融機関に連絡することで、手数料なしで商品の変更が可能です。

【移行】転職・退職したら、どうなる?

確定給付年金(DB)

転職や退職をした場合、もし転職先に確定拠出年金があれば、確定給付年金の年金資産(脱退一時金に相当する金額)を受け取り、移管することができます。
ただし、転職先の確定給付年金には移管できない点に注意が必要です。

確定拠出年金(DC)

確定拠出年金は、これまで管理されていた個人別の年金資産を現金化し、転職先の確定拠出年金に移管することができます。

ただし、転職先に企業型確定拠出年金の制度がなかったり、退職して働かない場合は、60歳まで現金を引き出すことができないため、個人型確定拠出年金(イデコ)として国民年金基金連合会に移管して運用を継続することになります。

【リスク】倒産・破産したら?

確定給付年金(DB)

確定給付年金の場合、会社が倒産したとしても、積み立てた年金資産は厳密に管理されています。そのため、倒産の時点で資産は保全されており、現社員と年金を受給している元社員に分配されます。

ただし、積立不足の企業では、予定された金額がもらえずに7割などに減額される可能性があります。

確定拠出年金(DC)

確定拠出年金の場合、社員個人ごとに資産が管理されていますので、会社が倒産しても影響はありません。自分の年金資産は保全されます。

【併用】「確定給付年金に加入しています。イデコも併用すべきですか?」

確定給付年金は、制度の廃止や企業型確定拠出年金への移行が進んでいます。低金利の影響を受けて、多くの企業が予定利率での運用ができない状況にあるためです。そのため、社員と話し合い、規約を変えるなど予定利率を見直す企業が増えました。

利率を見直すことで、計画していた給付額が変わることになります。また、会社が倒産した場合、資産が保全されたとしても、倒産した時点での資産しか受け取ることができません。

公的年金にしても、受給金額が下がり、受け取り開始年齢についても70歳へと遅らせるべきとの議論が続きます。

公的年金や企業年金に頼らないのであれば、個々人に求められるのが自助努力

老後資金を形成していく上で、メリットがあると注目されているのが個人型確定拠出年金(イデコ)です。

もし、老後資金のために、銀行や郵便局で積み立てをしているのであれば、同じ定期預金の商品を選択できる個人型確定拠出年金(イデコ)をおススメします。銀行で用意される定期預金の商品であっても、イデコには所得税と住民税が優遇される大きなメリットがあります。

たとえば、イデコに毎月1万円、年間12万円を積み立てたとします。
イデコでは、年末調整(または確定申告)によって、12万円にかかる所得税である約1.2万円(所得税10%で計算)が還付され、住民税も翌年分が1.2万円(住民税10%で計算)軽減されます。

利息はほとんどつきませんが、定期預金(元本確保型商品)だからこそ、イデコの税制優遇は大きな魅力といえるでしょう。また、イデコでは、将来のインフレに備えて、投資信託(価格変動型商品)を選択することもできますが、元本は保証されませんので注意が必要です。

【参考記事】FPが教える! 個人型確定拠出年金(iDeCo)で、定期預金(元本確保型)を選ぶ条件

【整理】メリット・デメリット

ここまで説明した確定給付年金(DB)と確定拠出年金(DC)の違いをメリット・デメリットで整理すると、以下のようになります。

確定給付年金(DB)のメリット・デメリット

メリット


  1. 将来もらえる金額が確定
  2. 運用は企業に任せるので、失敗しても企業が補てんする
  3. 転職時には、確定拠出年金へ移管できる

デメリット


  1. 業績悪化・倒産で、給付減額の可能性
  2. 企業が管理するため、社員個人は資産残高を把握しにくい

確定拠出年金(DC)のメリット・デメリット

メリット


  1. 運用成績によって大きく増額できる
  2. 資産残高の確認がいつでも可
  3. 業績悪化・倒産でも、個人の資産は100%保全
  4. 転職先への確定拠出年金に持ち運びできる

デメリット


  1. 運用成績によっては、積立資産を下回ることも
  2. 将来の給付額が不確定
  3. 原則60歳まで引き出せない
  4. 運用商品は投資信託が多いので、知識が必要

確定給付年金、確定拠出年金それぞれにメリット・デメリットがあります。

確定給付年金については個人で加入したくてもできません。運用は会社に委ねることになります。

それに対し、確定拠出年金は、社員個人が商品を選ぶため、運用実績に責任を持つことになります。商品について学び、運用の結果次第で年金資産を大きく増やすことも可能です。

どちらが個人にとってベストか。主体が企業か社員かによって異なるため、一概には判断できません。

ただし、「公的年金に頼らず、老後資金は自分で準備するもの」という意識、覚悟は今後ますます必要になるかと思います。

この記事の著者

菅田芳恵(社会保険労務士)

菅田芳恵(社会保険労務士)。社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士CFP(R)、産業カウンセラーなどの資格を保有。愛知大学法経学部経済学科卒業後、証券会社、銀行、生保、コンサルティング会社勤務後、独立開業。三重県金融広報委員会金融広報アドバイザー、名古屋市中小企業振興センター相談員も務める。

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