idecoの注意点

制度の解説

iDeCoのデメリットを理解する、11の質問

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iDeCo(イデコ)に加入する前に知っておくべきことをQ&A形式でまとめました。デメリット・注意点をおさえておきましょう。解説するのはファイナンシャルプランナー・杉浦恵祐さんです。

ファイナンシャルプランナー杉浦恵祐(すぎうらけいすけ)さん

ファイナンシャルプランナー・杉浦恵祐さん

Q「途中解約したら、どうなる?」

原則としてiDeCoは、途中解約(脱退)して払い戻しを受けることはできません。

脱退して脱退一時金を受け取ることができるのは、以下の5つの要件をすべて満たした場合のみです。


  1. 「拠出期間が通算3年以下、または積立資産が25万円以下であること」
  2. 「最後に企業型DCまたはiDeCoの資格を喪失した日から、2年以内であること」
  3. 「iDeCoや企業型DCの障害給付金の受給権者ではないこと」
  4. 「企業型DCの加入者資格を喪失した際、脱退一時金を受け取っていないこと」
  5. 「第1号被保険者で、生活保護、申請免除、学生納付特例、若年者納付猶予いずれかの国民年金保険料の納付免除者であること」

つまり、第2号被保険者(厚生年金加入者)である会社員・公務員や第3号被保険者である専業主婦等の方はiDeCoから脱退して脱退一時金を受け取ることはできません。また、国民年金の第1号被保険者で国民年金保険料を払える人も受け取れません。
受け取ることができるのは、生活保護を受給している方や国民年金保険料の免除等を受けている所得の少ない人のみです。

なお、脱退一時金を受け取ると一時所得の扱いとなります。ただ、そもそも所得が少ないので国民年金保険料の免除者になれるのですし、一時所得には50万円の特別控除額もありますので、実際に課税されるケースはほぼないと考えてよいでしょう。

Q「掛金を払えなくなったら、どうなる?」

以下2つの方法のどちらかを選びます(※Q1の脱退の要件を満たしていない場合)。


  1. 掛金を減らして「加入者」を継続
  2. 加入者から「運用指図者」になる

掛金を減らして「加入者」を継続

iDeCoの掛金は、5,000円以上1,000円単位で任意で決定します。減額することも可能です。
手続き方法は「加入者掛金額変更届」を運営管理機関に提出する必要があります。

加入者から「運用指図者」になる

掛金を払わずに、これまでの積立資産の運用のみする人を運用指図者(うんようさしずしゃ)と呼びます。手続きは「加入者資格喪失届」を運営管理機関に提出します。

ただし、運用指図者は掛金を払わないため、掛金の所得控除の節税効果がなくなるデメリットが生じます。

また、運用指図者になっても、加入者と同様に毎月の口座管理料がかかります。もし、資産の全額を預金で運用していた場合、利子よりも引かれる口座管理料のほうが多くなり、資産が目減りしてしまう点に注意が必要です。

なお、掛金を口座振替で支払っている場合、残高不足で引落しができないと、その月の掛金は拠出されなかった扱いとなります。
後日の再振替や振込による掛金の納付はできません。そして、運用指図者と同様に毎月の口座管理料がかかります。

Q「金融機関を変更できますか?」

金融機関(運営管理機関)の変更は可能です。手続きは「加入者等運営管理機関変更届」を変更先の運営管理機関に提出します。

変更後は選択できる運用商品も変わりますので、運用方法も新しい運営管理機関が取り扱う商品の中から選ぶことになります。ただし、すべての手続きが完了するまでに2ヵ月程度かかります。

変更前の運営管理機関の積立資産をいったんすべて売却(解約)し、その資金をもとに変更先で取り扱う運用商品を購入する扱いとなります。
たとえ、変更先に同じ運用商品があり、引き続きその商品を運用する意向があったとしても、変更する際にはすべて解約しなければなりません。

また、定期預金商品においては「中途解約利率」の対象となり、もらえる利息が減り、保険商品においては「解約控除」が適用され元本割れが生じる場合もあります。

投資信託においては、売却から購入までの間にある程度の日数が空いてしまいます。そのため、相場によっては安く売却し、高く買い戻すという資産を減らす結果につながるリスクもあります。

運営管理機関によっては、他の運営管理機関に変更すると、数千円程度の手数料を徴収するケースもあります。

Q「加入者が死亡した場合、積立資産はどうなりますか?」

亡くなった加入者の積立資産は、遺族が死亡一時金として受け取ることができます。

また、年金を受給中に死亡した場合も、遺族が残額を一括で受け取ることができます。死亡一時金を受け取るためには、受取人が運営管理機関に請求する手続きが必要です。

加入者が事前に受取人を親族の中から指定していた場合はその遺族が請求することになりますが、加入者による受取人指定がない場合は次の順位で受取人が決まります。

第1位は「配偶者」、第2位は「子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(同順位内は並び順)で、亡くなった加入者の収入によって生計を維持していた者」です。配偶者がおらず、亡くなった加入者の収入によって生計を維持していた子が複数人いる場合は、その人数によって等分して支給されます。

死亡一時金に対する税金は、加入者の死亡後3年以内に遺族が受け取れば「みなし相続財産」として相続税の対象になります。

みなし相続財産となる死亡一時金には、生命保険などの死亡保険金の非課税枠とは別枠で、死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人数)があり、相続税は発生しません。

なお、3年超5年以内の受け取りは受取人の一時所得として所得税の対象となります。5年超の受け取りは死亡一時金ではなくなり、亡くなった加入者の相続財産として相続税の対象(みなし相続財産ではないので非課税枠はナシ)となります。

Q「企業型DCに加入中ですが、iDeCoも同時加入できますか?」

企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)に加入する会社員が、個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)にも加入できるか否かは、勤務先の企業型DCの規約によって異なります。

マッチング拠出がある場合

まず、マッチング拠出(加入者が掛金を企業型DCに上乗せする制度)ができる企業型DCの場合、基本的にiDeCoの同時加入はできません。

ただし、この場合はiDeCoに加入しなくてもマッチング拠出を利用すれば、掛金全額が税制優遇の対象となります。そして、iDeCoとは異なり、自分で口座管理手数料を払う必要はありません。

<上限額>

マッチング拠出をする場合、会社の掛金を上回る金額を拠出することはできません。また、企業年金(確定給付企業年金など)の有無によって上限額が設けられています。

(企業型DC+マッチング拠出)の上限額
企業年金なし 月額5万5,000円
企業年金あり 月額2万7,500円

たとえば、確定給付企業年金がある場合、会社が1万5,000円の掛金を支払っていると、マッチング拠出の上限額は1万2,500円になります。

マッチング拠出ができない場合

次に、マッチング拠出ができない企業型DCの場合、iDeCoの併用が規約で認められているかによります。

iDeCoとの同時加入が認められている場合にポイントになるのが、企業型DCとiDeCoの拠出限度額の合計額は、企業型DC単独の場合と変わらないこと。これは企業型DCの拠出限度額の減少分が、iDeCoの上限額となるためです。

<上限額>

こちらも同様に、企業年金(確定給付企業年金など)の有無によって上限額が変わります。

(企業型DC+iDeCo)の上限額
企業年金なし 月額5万5,000円
企業年金あり 月額2万7,500円

たとえば、確定給付企業年金なし&iDeCoに同時加入できる場合、会社が企業型DCに月額3万5,000円を支払っていると、iDeCoの拠出限度額は月額2万円となります。

Q「転職した場合、iDeCoに拠出したお金はどうなりますか?」

転職先が企業か個人事業なのか、また、どのような企業年金制度に加入するかによって異なります。ケース別に解説します。

iDeCoの併用を認めない場合

iDeCoの加入者資格がなくなり、これまでの積立資産を企業型DCに移換しなければなりません。この場合は、移換せずに放置することはできません。

iDeCoの併用を認める場合

iDeCoの加入者資格は継続します。

よって、これまでの積立資産を引き続きiDeCoで運用したければ、加入者として掛金を拠出します。または、運用指図者として掛金の拠出をストップし、これまでの積立資産のみ運用します。

企業型DCで資産をまとめて運用したい場合、iDeCoをストップして企業型DCに移換します。

企業型DCがない or あっても加入者にならない or 個人事業で厚生年金(第2号)から国民年金(第1号)に変わる場合

iDeCoの加入者として引き続き掛金を拠出しながら運用、または運用指図者になるかの選択をする必要があります。

Q「住宅ローンの控除額が減るって本当ですか?」

iDeCoによる所得控除の適用後、所得税および住民税額から住宅ローン控除額を引ききることができれば、住宅ローン控除額が減少することはありません。

しかし、控除しきれなかった住宅ローン控除額が余ってしまった場合、結果として住宅ローン控除額が減ることになります。

課税所得(納税額)が少ないと、iDeCoに加入した場合の住宅ローン控除の節税効果が減るケースが多くなります。

減るかどうか、いくら減るのかは、対象者の所得税および住民税額、借入金の年末残高、居住開始時期などによって異なりますので、事前にシミュレーションする必要があります。

Q「ふるさと納税の影響は?」

自己負担額2,000円を除いた全額が所得税(復興特別所得税を含む)および住民税から控除されるふるさと納税の限度額は、課税所得(納税額)によって異なります。

iDeCoに加入すると、掛金分だけ課税所得が減るので、全額控除されるふるさと納税の限度額は低くなります。

※ふるさと納税の仕組みや限度額の目安については総務省のホームページ等をご覧ください。(※ふるさと納税ポータルサイト

簡単にシミュレーション

モデルケース)

Aさん:年収600万円の会社員、社会保険料90万円、扶養配偶者あり
給与所得:給与収入600万円-給与所得控除174万円=426万円
課税所得:426万円-社会保険料控除90万円-配偶者控除38万円-基礎控除38万円=260万円
全額(自己負担2,000円を除く)控除されるふるさと納税の上限額:年間6万9,000円
上限額をふるさと納税した場合の所得税および住民税額:37万1,300円

Aさんが年額27万6,000円(月額2万3,000円)をiDeCoに拠出すると、

課税所得:426万円-社会保険料控除90万円-配偶者控除38万円-基礎控除38万円-小規模企業共済等(iDeCo)掛金控除27万6,000円=232万4,000円
全額(自己負担2,000円を除く)控除されるふるさと納税の上限額:年間6万2,000円
iDeCoに27万6,000円拠出し、ふるさと納税を6万2,000円行った場合の所得税および住民税額:32万2,600円
iDeCo加入によるAさんの節税効果+ふるさと納税による軽減額:(37万1,300円-32万2,600円)+7,000円=5万5,700円

iDeCo加入によって、ふるさと納税(寄付金)の上限額が減るので返礼品のランクは下がるかもしれませんが、ふるさと納税(寄付金)を減らした額を考慮すれば節税効果自体には影響はありません。

Q「特別法人税の復活、iDeCoへの影響は? 」

1962年にiDeCoを含めた企業年金制度は「特別法人税」が課されることになりました。
これは、所得に対する課税が受取時まで繰り延べられることになるため、それに見合う「遅延利息」に相当する課税を行う必要があるとの趣旨によるものです。

具体的には、毎年の年金資産の残高に対して1.173%(国税1%+地方税0.173%)が年金資産から徴収される、つまりiDeCoの場合は加入者が負担する仕組みになっています。

ただし、長期にわたる景気低迷や金利水準の低下などから1999年4月から現在まで課税が凍結されています。

しかし、言い換えると将来的に金利水準が上昇していけば、iDeCoへの特別法人税の凍結が解除される可能性がないとは言い切れません。

もし将来、特別法人税の凍結が解除された場合、特別法人税は資産全体に課税されます。
よって、特別法人税率を上回る運用収益を上げることができなければ、資産が目減りしていくことになりかねません。

もちろん、すぐに特別法人税の凍結が解除する可能性は小さいと考えます。
また、凍結が解除されたとしても、それを上回る掛金の所得控除や運用収益非課税のメリットが見込めるのであれば、iDeCoに前向きに取り組んでよいでしょう。

Q「金融機関が破綻してしまった場合、積立資産はどうなる?」

iDeCoに関係する金融機関には(1)「運営管理機関」(2)「事務委託先金融機関(信託銀行)」(3)「預金や投資信託等の運用商品を提供する金融機関」の3つがあります。それらが万が一破綻してしまった場合、ケース別に解説します。

「運営管理機関」が破綻した場合

運営管理機関は、拠出した資産は一切管理していませんので、もし破綻したとしても資産が減ることはありません。
各種届出や給付の裁定の受付、運用商品の選定・提示・情報提供、運用指図の取りまとめ、加入者データの記録・管理などを行っています。

ただ、破綻した場合、新たな運営管理機関に変更することになりますので、Q3「金融機関は変更できますか?」で述べたような不都合が生じる可能性があります。 

「事務委託先金融機関(信託銀行)」が破綻した場合

もし信託銀行が破綻したとしても、分別管理(※)されていますので資産が減ることはありません。

※分別管理(ぶんべつかんり)とは、投資家の資産と信託銀行および証券会社の資産を分けて管理すること。

iDeCo加入者の掛金は、口座振替や給与天引きによって国民年基金連合会に支払われます。
そして、国民年基金連合会からの事務委託先である信託銀行にて分別管理されています。

「預金商品を提供する金融機関」が破綻した場合

<銀行>

iDeCoの預金もペイオフの対象になりますので、もし銀行が破綻したとしても元本1,000万円までとその利子は全額保護されます。

ただし、同じ銀行にiDeCo以外の預金をしていたり、iDeCoと合算して1,000万円を超える場合、超過分については全額保護されない可能性があります。

<保険会社>

破綻した保険会社の保険契約を引き継ぐ他の保険会社が現れれば、資産が減ることはありません。

しかし、なければ保護機構によって保護されるのは責任準備金の90%まで。その場合、残り10%はその全額が保護されない可能性があります。

「投資信託を提供する金融機関(運用会社・投資信託委託会社)」が破綻した場合

運用会社は運用を行うのみで資産管理は信託銀行が分別管理しています。
もし運用会社が破綻したとしても、資産が減ることはありません。ただし、他の運用商品への預け替えは必要です。

Q「つみたてNISAとの違いは?」

「iDeCo」と「つみたてNISA」には大きく3つの違いがあります。


  1. 「購入時」の税制優遇
  2. 「運用益非課税」の内容
  3. 「引き出し」の制限

購入時の税制優遇

1つ目の違いは、iDeCoが掛金の全額が所得控除されるのに対し、つみたてNISAには購入時の税制優遇がまったくないことです。

ただし、iDeCoは掛金(元本)に運用収益を加えた資産全体に対し、受け取り時に課税の対象となります。

一時金の受け取りであれば退職所得控除額を控除した金額の1/2、年金式の受け取りであれば公的年金等控除額を控除した金額に課税されます。
つまり、退職所得控除額や公的年金等控除額を超えた金額に対しては、それがたとえ自分で積み立てた資産(元本)に相当する分であっても課税されるのです。

一方、つみたてNISAでは元本は所得控除の対象ではありません。

「運用益非課税」の内容

2つ目の違いは「運用益非課税」の内容です。

iDeCoでは、加入時から運用指図者期間までの運用益すべてが非課税となります。

たとえば、20歳の人がiDeCoに加入し40年間拠出し、60歳後は70歳になるまで指図者として運用のみを行った場合、最長50年間にわたる資産すべてに対して運用益が非課税となります。

一方、つみたてNISAの運用益の非課税期間は最長20年で、延長はできません。

「引き出しの制限」

3つ目の違いは「引き出しの制限」です。

つみたてNISAはiDeCoと異なり、投資信託を自由に売却してお金を引き出すことができます。一方、iDeCoは60歳までの引き出しができません。

iDeCoとつみたてNISAは併用できますので余裕があれば両方とも加入するのがおススメです。ただし、どちらか選ばなければならない人は、次の観点で判断してみましょう。

<つみたてNISAを選ぶ>

iDeCoによる所得控除のメリットが少ない人や、60歳まで引き出しができないことが大きなデメリットと感じる人は、つみたてNISAを優先して利用するのが良いでしょう。

<iDeCoを選ぶ>

一方、iDeCoによる所得控除のメリットが大きい人や60歳まで引き出しが苦でない人、売買を積極的に行って運用益非課税のメリットを長期間にわたって享受したい人はiDeCoを優先的に利用するのが良いでしょう。

この記事の著者

杉浦恵祐(FP)

杉浦恵祐(ファイナンシャルプランナー)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)、1級DCプランナーなどの資格を保有。株式会社OSP代表取締役、株式会社相続相談センター取締役。名古屋大学経済学部卒業後、大手ベンチャーキャピタル、税理士事務所系資産コンサルティング会社を経て、2000年独立。

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